DexComのSeven Plusのレシーバーです。これは3時間のトレンドを示しています。
大きな装置は以前からありましたが……
意外でしょうが、病院の臨床現場で使われている「人工膵臓」は20年以上も前から実用化されているのです。日本でもすでに1988年より保険適用となって、一般臨床に使えるようになっています。ただし、冷蔵庫ぐらいの大きなもので、ベッドサイド型と言っても専用の部屋と専門医が24時間対応できることが求められています。
さらに人工膵臓の実施料は一回5000点(3割負担とすると患者負担が15,000円)と高額で、日本製の装置は1時間あたり2mlの血液を採血して希釈してから血糖測定をして捨ててしまう─なんと24時間で48ml!─こともあり、糖尿病の血糖コントロールには利用できません。
人工膵臓への難関はアルゴリズム
日本にはいろいろなバリアーがあって手が届きませんが、個人用の連続式血糖測定器とインスリンポンプは、アメリカの1型糖尿病者の日常生活の中ですでに利用されています。連続式血糖測定器はFDA(食品医薬品局)の認可を得ているものが3種類あります。あらかじめセットしたユニットと時間どおりにインスリンをからだに注入するインスリンポンプは、かなり歴史があり、それぞれ特徴のあるモデルが8種類はあります。(いずれも2010年2月現在)
インスリンポンプまたは連続式血糖測定器、あるいはその両方を使っている人は全米に40万人はいると思われますから、もう十分な実績があるのです。
この既存の二つの技術と機器を組合せれば、血糖値の自動測定とそれに対応したインスリンの自動注入がすぐにも実現しそうですが、それがなんとも難しいのです。
からだがいとも簡単に行っている血糖コントロールを模したアルゴリズムの開発を世界中で競っている最中です。
ちょっと考えると、からだは上昇した血糖(ブドウ糖)に対してそれ相応のインスリンを分泌しているだけのように思われますが、実際はそれだけではなく、もっと複雑で正確無比なコントロールをしています。例えば、ものを食べると、それが小腸に届くか届かない内に小腸にある内分泌細胞からGIP(ジーアイピー)とかGLP-1(ジーエルピー・ワン)というペプチドホルモンが放出されて、それが膵臓のベータ細胞に作用して血糖が急激に上がる前からインスリンを早め早めに、より多く分泌させて血糖の乱高下を防いでいるのです。
しかも、GIPとGLP-1は血糖値が下がるとインスリン分泌を強める働きをやめますからとても安全なのです。
現在ある連続式血糖測定器のセンサーは皮下脂肪の間質液の糖度を測りますから、血液中ブドウ糖の上昇・下降の変化に対してどうしても15分以上の遅れが生じます。このタイムラグを計算しながら、現在の血糖値に比例した部分と、食事や運動による急激な血糖値変化に応じた部分を計算して、更に次の場面を予測しながらインスリンを注入したり、ストップしたりすることが至難の業なのです。危険な低血糖がいつも隣り合わせですから。
人工膵臓、この夢に向けてどんな一歩が示されたのかは次回に説明いたします。
■関連リンク(連続式血糖測定器)
Guardian Real-Time (Medtronic Diabetes)
FreeStyle Navigator (Abbott Diabetes Care)
Seven Plus (DexCom)