インスリン

インスリン

2型糖尿病と診断された時点で、直ちにインスリン療法に入ったほうが経口薬治療よりも血糖コントロールが良好という発表がありました。権威ある医学誌『ランセット』(2008.5月24日号)に掲載された情報ですから無視できません。

糖尿病「インスリン療法」に対する誤解

通常の2型糖尿病の治療は食事と運動の見直しというヘルシーな生活習慣からスタートをして、経口薬からインスリン療法へと進行します。

しかし、インスリン導入には患者のみならず、医療サイドにもためらいや先延ばしを計る傾向が強いので、合併症が現われるまで経口薬で頑張り過ぎてしまうことがよくあります。つまり、手遅れになってからのインスリン治療になりがちなのです。

どうしてもインスリン注射だけは避けたいと思っている患者は大勢います。人によってその理由は実にさまざまです。ある人はインスリンを始めたら生涯やめられない!とまるで麻薬のように忌み嫌います。またある人はインスリンになるとEDになるという噂を信じたり、自分の親族がインスリンになったら合併症が悪化した事例からインスリンを悪役と思い込んでいます。

もちろん、これらはインスリンのせいでなく、それ以前にダメージを受けていたためですが、注射を嫌がる理由を探すのですから八つ当たりでも構わないのかもしれません。でも一番大きな理由は、インスリン治療になることは「私が医師や栄養士の指示を守れなかったから……」という挫折感が強いことでしょうね。インスリン注射に直面した2型糖尿病者の殆んどが自分を"ギルティ"と感じています。あのとき真面目にやっていれば、今でも食事療法と運動療法で済んだのに……というわけです。

でも、そうではないのです。


2型糖尿病はゆっくりと進行する病気

今から10年程前にUKPDS(英国前向き糖尿病研究)という2型糖尿病の大規模な研究が終了しました。これは英国で新たに2型と診断された患者約5,100人を、生活改善のみとか、インスリン療法、SU剤、メトフォルミン等のグループに分けて、10年以上も追跡調査したものです。糖尿病研究の金字塔となるものですが、この研究によって2型糖尿病のことがいろいろ解明されました。

その一つに2型糖尿病は「進行する状態である」というものがあります。正常の膵臓のインスリン分泌をするベータ細胞の機能を100とすれば、2型糖尿病と診断されるときにはインスリン分泌能力が50%に低下、さらに6年もたてば25%以下に落ちてしまうという結果が出ました。

つまり、自分が医師の言うことを守らなかったからではなく、2型糖尿病とはいずれはインスリンが必要になる病気だったのです。


現在、インスリン療法の自己注射は無痛!

一日何回も注射針を自分で刺すなんて恐怖ですよね。でもご安心を! 今日のインスリンはペンのような形状になっていて、インスリン注射量はダイアルを合わせるだけ。極く細い、短い使い捨ての注射針を痛みを感じない腹部の脂肪に刺すだけですから、出血も痛みも殆んどありません。

以前は狭いトイレの中で、注射器やインスリン、注射針、消毒布などを"小間物屋"を開くように並べて、糖尿病になったことを何とも情けなく思ったものですが、現在は食卓で下着の上からいとも簡単に注射できます。

インスリン注射を嫌がるのは注射針のせいと長らく信じられてきましたが、アメリカで糖尿病薬GLP-1作動薬のByetta(バイエッタ)が爆発的に人気が出たことから針の恐怖説は否定されました。Byettaは日本でも近々使われるようになりますが、インスリンと違って低血糖の心配がなく、空腹になりにくいので減量効果もあることが注目されて大人気となりました。実はByettaは注射薬で、朝夕2回の注射が必要なのです。

糖尿病の薬で1922年に一番最初に使われたのがインスリンで、今でも最も効果があるものです。インスリンは「賢者の薬」と言われるように、決して安易な扱いやすいものではありません。しかし、軽くみずに恐れずに扱えば人生を全うさせてくれる素晴らしい薬です。

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