気分が良すぎる時は誇大妄想にご用心!
自信を持ってバリバリ仕事をする事は素晴らしい事ですが、自分を特別な存在と思い、皆の前で「今日から俺が会社を仕切る」と宣言してしまったら誇大妄想です
気分が良く、自信がみなぎっている時は、えてして、自己を過大評価し物事に失敗してしまう事があります。例えば、昇進後、気が大きくなってしまい、返済能力を超えた借金をしてしまうといった事がありますが、自己の過大評価は他人は気付きやすくても、本人はなかなか気付き難い面があります。時には、本人の知らないうちに、自己認識が誇大妄想に近くなっている場合もあるでしょう。

今回は、自分に対して非合理的な程、強い自信を抱いてしまう誇大妄想についてお話したいと思います。


誇大妄想の特徴と原因

誇大妄想は被害妄想、嫉妬妄想などと同じく妄想の一種です。「自分は全世界の富を握っている」、「私は織田信長である」、「自分の作品は後世に残る凄いものなのに認めてもらえていない」など、誇大妄想は他人が非を唱えても決して揺がない程、強い信念です。

もっとも、自分を特別であると思うナルシスト的傾向は多少の差こそあれ、私達の気質にあります。自己心理学の創始者H.コフートによると自己愛のルールは幼児期、母親の完全保護から離される時、自分の心を守る為に生じるそうですが、自分への強固な自信が誇大妄想に変わる原因にはいろいろな説明が考えられます。

誇大妄想が劣等感から自分を守る為に必要となる場合や何かの成功や気分の高まりがナルシスト的自負心に拍車をかけてしまった場合もあるでしょう。精神医学の大家S.フロイトの説は、誇大妄想は同性の他人を愛する代わりに自分を愛する事を意味し、同性愛の思考が意識に上るのを防いでいるそうです。いずれにせよ、誇大妄想が生じている時は心の病気を考慮する必要があります。

次に、誇大妄想の出現しやすい心の病気について述べます。


誇大妄想の出現しやすい心の病気

誇大妄想が出現しやすい心の病気としては以下の3つが代表的です。
  • 躁うつ病 躁うつ病は気分の波が大きすぎるのが特徴の心の病気です。躁うつ病のそう状態になると気分の高揚と共に自信が湧き上がって、何でも出来るような気になり、誇大妄想が生じやすくなります。頭はフル回転を通り越して空回り状態となり、次から次へアイディアが浮かぶものの、思考にまとまりが欠けやすくなります。薬物療法によって気分の振幅をコントロールする必要があります。
  • 妄想性障害 妄想性障害は精神症状が主に妄想に限局している心の病気です。妄想性障害では妄想の内容が被害妄想である事が多いのですが、誇大妄想である場合もあります。妄想を除くと精神機能にほぼ問題はないので、社会的機能は比較的保たれますが、やはり、人間関係、仕事面でのトラブルは生じやすいです。社会的機能を改善する為には治療が望ましいですが、本人は治療の必要性をほとんど自覚していないという難しい問題があります。
  • 統合失調症 統合失調症では現実と非現実の境界がぼやけてしまい、幻覚や妄想が出現しやすくなります。誇大妄想の内容は妄想性障害と比べると、より奇妙で非合理的な傾向があります。統合失調症の原因は脳内伝達物質ドーパミンの機能異常が大きな要因であり、薬物療法によって脳内でのドーパミンの働きを調整する事によって、幻覚や妄想は、多くの場合、大きく改善されます。
     
上記の心の病気で見られるように、自己への過信が誇大妄想になっている場合は病的状態である事は明らかです。しかし、自信過剰と誇大妄想の境界は曖昧なもので、強固な自信を糧に成功するか、それとも自己を過信して失敗してしまうかの分かれ道にもなります。自己認識と現実とのギャップを作らない事が大切です。自信過剰と誇大妄想の境界線上にいるかも知れない時、特に、何かで成功して気分が高揚している時は、勝って兜の緒を締めるという古来からの教えを思い出しましょう!
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