何時間掃除しても汚れが気になってしまう……。強迫観念の状態では、特定のことに意識が占有されてしまいます
上記のような例は、心に負荷がかかった時の正常範囲の反応です。しかし、もし確認したい気持ちが2~3回では終わらず、10回確認しても不安が取れなかったら? さらに、確認行為を30分以上続けても安心できなかったら? このような場合は強迫神経症の可能性が出てきます。強迫神経症の特徴や原因について詳しく解説します。
強迫神経症の特徴・症状
強迫神経症の患者数は男女ほぼ同数。20歳前後で最初の症状が出ることが多く、しばしば発症は突然です。一生のうちで発症する確率は人口の約2~3%程度。症状の特徴は、「これをしなくてはならない」「この状態でなくてはならない」という強迫観念と、それにともなう強迫行為です。強迫神経症でよく見られる強迫観念には以下のようなものがあります。- 菌や汚れに対する恐怖感が強い
- 鍵のかけ忘れなど、いつまでも不安が消えない
- 性的イメージや暴力的衝動など、不快な考えが頭から離れない
- どんなことにも過剰な正確さを要求してしまい
強迫神経症の原因
強迫神経症の発症には、脳内の神経科学的な要因が深く関係していると考えられています。どんな人でも発症する可能性があり、もともと几帳面で完璧主義的な人がなりやすいという傾向はありません。
発症の詳細メカニズムは解明されていませんが、脳内神経伝達物質の一つである「セロトニン」の働きが悪くなり、さらに脳内の「基底核」と呼ばれる、運動調節、認知機能、感情などの機能を担う部位に何からの問題が生じることが原因と考えられています。
よい例として、脳内の基底核に原因があると考えられている「トゥレット症候群」と呼ばれる病気があります。この病気はまばたきなど、突然生じる不随意運動であるチックが主な症状ですが、しばしば強迫神経症に似た症状が見られます。一方で、強迫神経症においてもチックが認められることが少なくないなど、強迫神経症とトゥレット症候群の症状は一部で重なり合っています。このことからも、強迫神経症は性格的なものでなく、生物学的な要因が強い病気だということがわかると思います。
いずれにしても、深刻な強迫神経症になると日常生活上のルーチンをこなせなくなるほど、多大な時間が強迫観念と強迫行為に費やされてしまいます。回復するためには適切な治療を受けることが不可欠です。