尿路の役割
血尿は尿路系の異常を知らせる手がかり
■尿を作って排出する臓器の総称
腎臓の役割についての章の冒頭でも申し上げたように、尿路は尿の生成と体外への排泄をつかさどる臓器の総称で、腎臓、尿管、膀胱、尿道からなります。腎臓で作られた尿を膀胱に運び、溜め、体外に排出する一連の働きが尿路全体の役割です。
腎臓は尿を作るために必要な作業である血液のろ過をつかさどります。また、水分や電解質、血圧などを調節し、体内環境を整えます。尿管は腎臓で作られた尿を膀胱まで運ぶ管状の臓器です。
膀胱の役割は、腎臓で作られ、尿管から運ばれてきた尿を溜め、排出することです。尿道は尿を体外に導く通路です。
尿路の異常
■腫瘍と結石は構成臓器に共通
尿路を構成する臓器のうち、腎臓の代表的な異常は腎臓そのものの機能が悪くなることです。つまり、腎不全になるということです。このほか、腫瘍、尿路感染、結石といった病気に大別できます。
尿管にも腎臓と同様、腫瘍があります。結石が尿管に詰まることもあります。また、先天的な尿管の狭窄などで通過障害を引き起こし、水腎症となる場合もあります。
膀胱の機能障害としては、尿を溜める蓄尿障害や膀胱の収縮力が損なわれることで起きる排出障害などがあり、その原因としては神経疾患によるものが挙げられますが、原因不明の機能障害も少なくありません。腫瘍、結石のほか、間質性膀胱炎という膀胱の特殊な炎症疾患もあります。
尿道に関しては、膀胱の出口付近にある前立腺肥大や尿道狭窄などによって通過障害が起こることがあります。尿道には括約筋があり、その働きでおしっこが漏れるのを防いでいます。それが障害されることで、逆に尿が漏れる尿失禁という病態が起こってきます。
尿路の異常に伴う症状
■血尿や痛みが手がかりに
尿路系の異常による症状は臓器によって異なりますが、多くの場合、血尿が手がかりとなります。
血尿には目で確認できる肉眼的血尿と、検査で分かる尿潜血とがあります。また、先天的な尿管狭窄や尿管結石などにより、腎臓から膀胱に至る尿路に通過障害が起これば、腎臓が腫れ、水腎症となって痛みを引き起こします。
腎臓そのものの機能が失われる腎不全では、タンパク尿や尿所見の異常をきたします。腎機能が高度に障害されると、尿毒症となり、全身の浮腫が見られるようになります。さらに病状が進行すると、心不全や、その他の全身的な異常を招きます。
■膀胱に関わる症状
膀胱の病気では、排尿障害に伴うさまざまな症状が現れます。尿を出すことに関わる症状と、溜めることに関わる症状です。
おしっこが出にくい、途中で途切れる、おしっこをするときに力むといった症状は、尿を出す異常に関わるもので、おしっこが近い、急に尿がしたくなって漏れそうになる、間に合わずに漏れる、咳やくしゃみで尿が漏れるといった症状は、尿を溜める異常に関わるものです。
血尿は膀胱の病気でも重要な症状で、膀胱に炎症が起これば、排尿時痛や頻尿などの症状がみられます。
臓器別に見た病気の特徴
腎臓の機能障害を起こす感染症や結石、腫瘍などは尿管、膀胱、尿道にもみられますが、臓器別にもう少し詳しくみてみると、特徴的な病気にはどのようなものがあるでしょうか。
腎臓では、急性腎炎と慢性腎炎、腎盂腎炎、腎がん、腎盂がん、腎結石や水腎症などが代表的な疾患といえます。尿管に関しては狭窄と結石が代表疾患となりますが、がんもみられます。
膀胱では機能障害が重要です。神経因性膀胱や過活動膀胱などが代表的なもので、その他に急性膀胱炎、間質性膀胱炎、膀胱結石、膀胱がんなどを挙げることができます。間質性膀胱炎については、「尿路のその他の病気」と「診断法・治療法」で詳しく取り上げます。
尿道の病気には、尿道狭窄、尿道がんなどがあります。前立腺は正確に言えば尿路ではなく、男性特有の生殖器ですが、膀胱の出口にあって尿道を取り囲む臓器であるために、その異常により種々の排尿障害を引き起こします。前立腺の代表的な病気には、前立腺肥大症や前立腺がん、急性前立腺炎、慢性前立腺炎などがあります。
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