機能的な異常の診断と治療
膀胱の機能を弱める原因を取り除くことが大切
■薬物療法と訓練との併用が効果的
膀胱機能障害の診断では、症状と既往歴の把握が重要です。
まず、症状が尿を出すときに起きるのか、尿を溜めるときに起きるのかを十分に問診します。その上で、神経疾患の有無などを聞きます。しかし、もっと詳しく調べる必要がある場合には、膀胱の機能を知るための尿流動態検査という専門的な検査を行います。
膀胱の機能異常に対する治療はさまざまですが、膀胱が勝手に収縮してしまう神経因性膀胱や過活動膀胱には、一般的に薬物療法を行います。抗コリン剤という、膀胱の収縮を抑える効果のある薬を使って頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感や切迫性尿失禁といった症状を改善します。
薬物療法のほかに、膀胱訓練を指導することもあります。膀胱訓練とは、尿がしたくなっても、出来る限りおしっこを我慢する訓練です。膀胱を訓練し、排尿時間を少しずつ延ばしていくことで、抗コリン剤と同程度の効果があるという報告があります。薬物療法と併用すれば、より効果的という報告もあります。
■感染予防にも役立つ導尿
神経因性膀胱で膀胱が収縮できないために尿が出せない、あるいは排尿後も膀胱に多量の尿が残る(残尿)がある場合、有効な薬剤がないことから、導尿が必要となります。
導尿とは、尿道からカテーテルを挿入して膀胱内の尿を排出することで、一定の時間ごとに導尿を行うことを間歇(かんけつ)導尿といい、自分で導尿を行うことを自己導尿といいます。
間歇導尿は、頻尿や排尿困難の症状改善、あるいは残尿が原因で起こるような尿路感染や腎機能障害の防止にも役立ちます。
腹圧性尿失禁の診断と治療
■骨盤底筋訓練
腹圧性尿失禁は理学療法か手術療法で治療します。理学療法としては、膣や肛門を締めることで骨盤の底の筋肉を強める「骨盤底筋訓練」という運動を1日に50回程度行います。
排尿の途中で、意識的に排尿を中断する訓練も同様の効果が期待できます。軽度な尿失禁であれば70%ほどの効果があるといわれていますが、高度なものには効きません。
■手術療法の標準はTVT
高度な腹圧性尿失禁にはTVT(Tension-free VaginalTape)という手術を行います。スリング手術と呼ばれ、現在世界中で最も広く行われている標準的手術です。
局所麻酔で行うことができ、30分ほどの手術で、長期成績も良好で、90%以上で尿失禁が消失するといわれています。患者のQOL(生活の質)を高める意味では非常に良い選択です。このほか、干渉低周波による電気刺激治療を行うこともあります。
感染症の診断と治療
■抗生物質を投与する
急性膀胱炎は放っておいても治りますが、早く治したい場合には抗生物質を投与します。通常、1日から3日間、抗生剤を服用するだけで十分です。
1週間とか1カ月など、長期処方される場合がありますが、必要でないばかりか、薬剤耐性(薬の作用に抵抗性を持つようになる)の細菌が出てくる恐れがあり、勧められません。
また、抗生物質を長期間飲み続けないと慢性膀胱炎になると言われることがあるかと思いますが、もともと細菌による慢性膀胱炎という病気はありません。
膀胱がんの診断と治療
■再発率は60~70%
早期の小さい膀胱がんは尿道から内視鏡を入れて削り取る経尿道的な切除術で治します。しかし、再発率は60~70%といわれているので、予防のために膀胱の中に抗がん剤や、弱毒結核菌であるBCGを注入します。
■全摘後はストーマや代用膀胱で
進行した膀胱がんに対しては、膀胱を摘出します。膀胱がないと尿溜めることができなくなるのでストーマを作ったり、回腸を尿管につないでストーマとして使う回腸導管を行ったりします。
最近では、腸で代わりの膀胱を作る代用膀胱という方法も増えています。代用膀胱を尿道と吻合することにより、膀胱摘出前と同様に尿道から尿を出すことができます。進行がんや、再発の場合には抗がん剤を用います。
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