前立腺肥大症の症状
肛門から指を入れ、前立腺の大きさや形、硬さなどを調べる
■排尿症状
主に尿の通過障害で起こるものです。前立腺肥大による通過障害は、前立腺そのものの物理的な閉塞による「機械的な閉塞」と、前立腺を構成する平滑筋の緊張により、尿道を圧迫することによる「機能的な閉塞」に分けることができます。
具体的には、排尿時に
- 勢いがない
- 途切れる
- 出始めるまでに時間がかかる
- 出終わるまでに時間がかかる
- 力まないと出ない
■蓄尿症状
肥大した前立腺による通過障害のために、膀胱が過敏になることによって起こるもので、夜間に何度もトイレに起きる「夜間頻尿」が初期段階にみられる特徴です。頻尿の目安は、トイレに行く回数が、夜間で1回以上、昼間で8回以上です。
頻尿以外の症状として、
- 残尿感
- 尿意切迫感
- 切迫性尿失禁
■その他の症状
排尿困難が進行すると、残尿が増えるために起こる頻尿があります。こうした症状を放置すると、残尿が徐々に増え、膀胱には尿がたまっているのに尿が出ない「尿閉状態」や腎機能不全を招くことがあります。
前立腺肥大症の診断
前立腺肥大症の診断において行われる問診では「国際前立腺症状スコア(IPSS)」という、患者の自覚症状を定量化する評価方法が用いられています。IPSSは、排尿症状に関する7項目の質問を6段階で評価し、合計点によって治療方針を決めたり、治療効果を判定したりします。
■IPSS
Q1:過去1カ月間、排尿後に尿がまだ残っている感じがありましたか。
Q2:過去1カ月間、排尿後2時間以内にもう1度行かねばならないことがありましたか。
Q3:過去1カ月間、排尿途中に尿がとぎれることがありましたか。
Q4:過去1カ月間、排尿をがまんするのがつらいことがありましたか。
Q5:過去1カ月間、尿の勢いが弱いことがありましたか。
Q6:過去1カ月間、排尿開始時にいきむ必要がありましたか。
Q7:過去1カ月間、床に就いてから朝起きるまで普通何回排尿に起きましたか。
上記の質問に対し、それぞれに該当する回数を6つの段階から選びます。
・なし=0点
・5回に1回未満=1点
・2回に1回未満=2点
・2回に1回位=3点
・2回に1回以上=4点
・ほとんどいつも=4点
※Q7に対しては、具体的な回数が点数となります(5回以上は5)。
合計点で0~7点が軽度、8~19点が中程度、20点以上が高度(重症)と判断されます。
前立腺肥大症の検査
問診では、IPSSを使って、排尿に関する自覚症状を尋ねます。それ以外に次のような検査を行います。■尿検査
主として、尿路感染のチェックを行います。排尿途中の中間尿を採るだけですから、短時間で済みます。尿路感染症の有無だけでなく、尿路の出血や、尿路結石症の存在を診断することもできます。費用は300~900円です。
■直腸診
症状から、前立腺肥大症が疑われたときに行います。直腸から指を挿入して前立腺に触れ、大きさや固さを確認します。抵抗を覚えられる方もありますが、現在では極めて一般的な検査です。
■超音波検査
前立腺の大きさや残尿量、水腎症の有無などを調べます。膀胱に尿がたまった状態のほうが前立腺の様子がよくわかるので、検査前には尿をためておくようにします。検査に伴う苦痛はありません。費用は2500~4000円です。
■PSA(前立腺特異抗原)検査
がんの有無を調べる血液検査です。腫瘍マーカーとなる前立腺特異抗原(PSA)を調べます。通常と同じ採血ですから、肉体的負担はありません。費用は3000~5000円です。