肝臓・すい臓・胆のうの病気/B型肝炎

B型肝炎の感染経路

B型肝炎の主な感染経路をはじめ、性行為、医療行為、授乳などの持つ感染リスクについて、わかりやすくまとめました。

染谷 貴志

執筆者:染谷 貴志

医師 / 消化器・肝臓の病気ガイド

B型肝炎の主な感染経路

B型肝炎は血液を介してうつる病気なのです。

B型肝炎は血液を介してうつる病気です

B型肝炎ウイルス(以下、HBV)は、主にB型肝炎ウイルスに感染している人の血液を介して感染します。また、感染している人の血液中のウイルス量が多い場合、その人の体液などを介して感染することもあります。例えば、以下のような場合には感染する危険性があります。

  • HBV感染者の血液が付着した針を誤って刺した場合
  • HBV感染者と性交渉をもった場合
  • HBV感染者の血液が付着したカミソリや歯ブラシを使用した場合
  • HBVに感染している母親から生まれた子に対して、適切な母子感染防止策を講じなかった場合

また、以下の場合にも感染する可能性があります。もちろん行為自体の可能性が非常に低いことですが、
  • 他人と注射器を共用して覚せい剤、麻薬等を注射した場合
  • HBV感染者が使った注射器・注射針を、適切な消毒などをしないでくり返して使用した場合
  • HBV感染者からの輸血、臓器移植等を受けた場合
などです。つまりは、一緒に食事をすることや、風邪を引いたときの咳などから感染することはありませんので、B型肝炎の患者さんを避ける必要は全くありません。

性行為によるB型肝炎感染

少し具体的な話をすると、HBV(B型肝炎ウイルス)は性行為で感染する場合があります。一般にHBVに感染している人の血中には、HBVが大量に存在します。C型肝炎ウイルス(HCV)やヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染している人の血液に比べて感染力が高く、本人が気付かない程度でも炎症がある場合には、精液や体液、分泌物などの中にごく微量の血液が混入することがあり、これらを介してHBVの感染が起こることがあるのです。

近年、若い年齢層を中心に、性行為に伴うHBV感染が拡大傾向にあります。特に、これまでの我が国ではあまり見られなかった遺伝子型AのHBV感染が若い年齢層を中心に広がりつつあり、この遺伝子型のHBVに感染した人では、その10%前後が持続感染状態に陥る(キャリア化する)ことから、問題となっています。不用意な性交渉は、 HIVのみならずHBVに感染する危険性も高いことを周知することが大切です。

それでは、夫婦間では感染することはあるのでしょうか? これも、やはり感染する可能性があります。そのためB型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)の人が結婚を予定し、相手がHBVに対する免疫を持っていないことが分かった場合には、相手の方にはあらかじめB型肝炎ワクチン(HBワクチン)を接種しておくことが望ましいといえます。予防のためのワクチンについては、また後述します。

医療行為によるB型肝炎感染

医療行為でB型肝炎に感染をするリスクがあるか尋ねられることが時々ありますが、現在日本で行われている医療行為(歯科医療含む)でHBVに感染する可能性はまれと考えられています。

ただし医療器具の不適切な取り扱いや、不衛生な取り扱いがあれば、感染のリスクが出てきます。実際、使い捨ての医療器具を再利用していたなどという事例が報道されることもあります。しかし、これは本当にまれなことと考えていいと思います。なぜならこれらは明らかな違法行為であり、通常はまず行われていないからです。

HBVキャリアの母親から生まれた子供へのB型肝炎感染

HBe 抗原陽性、つまりは一般的に肝炎活動性が強い状態のHBVキャリアの母親から生まれた子供は、母子感染予防措置を行わないで放置した場合、そのほぼ100%にHBVが感染し、このうちの 85~90%が持続感染状態に陥る(キャリア化する)ことが分かっています。

一方、HBe抗体陽性の母親から生まれた子供では、約10~15%にHBVの感染が起こりますが、キャリア化することはまれであることが分かっています。とは言っても、妊婦検診でHBe抗原陽性のB型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)であることが分かった場合でも、分娩直後に適切なHBVの母子感染予防措置を行えば、生まれた子供の95%~97%について、キャリア化を阻止することができます。また妊婦検診でHBe抗体陽性のHBVキャリアであることが分かった場合でも、念のために出生直後の児に対してHBVの母子感染予防措置を行っておくことをお勧めします。

B型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)の母親の
授乳によるB型肝炎感染

母親がB型肝炎ウイルス持続感染者(HBV キャリア)であっても、生まれた子供に対してHBV(B型肝炎ウイルス)の母子感染予防が適切に行われている限り、特に授乳を制限する必要はありません。ただし、この場合でも、母親の乳首に明らかな傷がある場合や、出血している場合には、感染を防御できる量を上回るHBVが口腔の粘膜を介して子供の血液中に入り、感染する恐れがあるので、傷などが治るまでの間の授乳は控えてください。
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