ピロリ菌の除菌治療法と治療費
3種類の薬を飲むだけで済むピロリ菌除菌。体への負担の少なさも魅力
注射も入院も不要で費用も後述する保険が効くケースなら3000円程度で済み、非常に簡単。保険が効かない場合でも、10000~15000円程度見ておけば、治療を受けられます。除菌の成功率は平均8割。報告者や地域により除菌成功率には差がありますが、この違いの原因はまだわかっていません。
最近では、同じピロリ菌でも従来の抗生物質では効かない耐性菌が出現し、除菌率の低下が問題になってきています。最新のデータによると「クラリスロマイシン」という薬には約28%のピロリ菌が耐性を有しており、特に除菌失敗例では半数以上に耐性菌が確認できると言われています。このため当初の除菌率は約 90%でしたが、現在では60~70%台にまで低下しています。ただし「アモキシシリン」という薬には今のところ耐性菌はおらず、有効性が高いようです。
ピロリ菌の除菌治療中の副作用と注意
ピロリ菌の除菌治療中の主な副作用は以下の通り。- 下痢
- 腹痛
- 味覚異常
- 舌炎
- 口内炎
- アレルギーによる湿疹など
ただし、治療中止になるほどの強い副作用が起きる確率は全体の2~5%程度。高齢者ほど治療に問題があるということはありません。
また、除菌治療中に一度でも薬を飲み忘れると除菌率が低下するので、注意が必要。特に2回続けて飲み忘れた場合は除菌はまず成功しません。また、除菌治療中の喫煙は除菌率を低下させるため、治療中は禁煙をお勧めしています。
初回除菌が失敗した場合の再除菌法
以前は、「クラリスロマイシン」という薬を増量して再除菌する方法が1回に限り保険診療で認められていました。しかし、初回除菌がうまくいかない最大の原因がクラリスロマイシン耐性菌であることが多いので、効果は望めません。このため、クラリスロマイシンの代わりに「メトロニダゾール」という抗生剤を用いる二次除菌法が2007年保険適用になりました。これにより、初回および二次除菌で90%以上の除菌成功率が望めるように。この場合の費用は保険診療3割負担で大体3000円程度。なおメトロニダゾールを内服中は禁酒が必要。服用中に飲酒すると、腹痛、嘔吐、ほてりなどの副作用が出ることがあります。
いずれにしても副作用が強くうまく除菌できない場合は、その後もピロリ菌とうまく付き合っていけばいいのです。除菌に失敗しても必ずしも大きな病気になってしまうというわけではないので、あまり深刻になりすぎないことも大切です。
ピロリ菌の除菌後の再発率・再感染率
ピロリ菌の除菌成功した場合、再感染することは稀。ピロリ菌が胃に住みつく最大のチャンスは私たちが幼児期だけのようで、成人してから新たにピロリ菌が住みつく可能性は低いと考えられています。幼児期の予防法については後述します。ピロリ菌除菌で保険が適応できるケース
現時点の日本の保険制度では、ピロリ菌がいるとわかっただけではピロリ菌除去には保険が適応されません。ピロリ菌が原因で潰瘍がある場合のみ、除菌に保険が適応できます。海外の事情も同様。ピロリ菌除菌をした方が良いといわれている慢性胃炎ですら、残念ながら検査も除菌も保険適応ではありません。理由は経済的なもの。海外も同じ事情がほとんどですが、現在の日本ではピロリ菌感染者があまりにも多いため、全員の除菌に保険を適応した場合、国が負担できる医療費を越えてしまうことが懸念されているからです。
ピロリ菌に対する健康食品の効果
LG21などの一部のヨーグルト、マヌカハニーなどのハチミツ、ココアの脂肪成分、梅肉エキス、ライスパワー101、ブロッコリーの新芽(スプラウト)、わさびの葉、シナモン、海藻類、クランベリーなどに含まれる成分には、ピロリ菌を抑制する作用があります。いくつかのものは商品化され、健康食品として販売されています。抑制作用はあるものの、ピロリ菌除菌に有効という科学的根拠はまだありません。ピロリ菌の予防法
ピロリ菌は食べ物や飲み水からの「経口感染」が主と考えられていますが、感染ルートがはっきり解明されていないので、感染予防法はまだ確立されていません。現在は昔に比べて衛生環境もよいので、きちんと検査されていない井戸水を飲まないようにするなど、最低限の注意ができていればよいでしょう。家庭内でできることはゴキブリの駆除。ゴキブリがピロリ菌を運んでいる可能性が指摘されているので、特に小さな子供のいる家庭では台所を清潔に保ち、ゴキブリの駆除を心がけることが一つの予防法として考えられています。