胃腸の病気だけではない吐き気の原因
片頭痛など、消化器以外の病気でも吐き気は起こります
最も多いのは、消化管の働きが乱れて嘔吐反射中枢が刺激されるケースですが、それ以外にも船や自動車などの乗り物の揺れや、妊娠初期の吐き気、モルヒネなどの鎮痛剤や、癌の化学療法薬などでも吐き気が起きることがあります。
外来で患者さんを診る私たち医師は、吐き気や嘔吐についてはさまざまな原因がある中でどの病気の可能性が高いか、また、どの病気の可能性が低いかなどの順番を頭の中で決めて診察を進めていきます。具体的な病名については、「吐き気・嘔吐の原因となる病気」をご覧ください。
見つけにくい心因性嘔吐
嘔吐は、食べたものや胃酸・胃液などの胃の内容物が、強力な力で胃から逆流してしまう症状です。胃袋を風船と考えてみましょう。風船がパンパンに膨らんだ状態(医学的には「胃の内圧が高まる」という)や、風船を外からグイグイと押した状態(医学的には「腹圧が高まっている」という)になった場合、嘔吐が起きます。よくあるのは二日酔いの時や、腐ったものを食べた時だと思いますが、これは過剰なアルコールや腐敗した食物など、有害なものを吸収せずに排除しようという体の防御機構です。気持ちが悪いのにうまく吐けない時、指を喉の奥に突っ込んで吐く人も多いようですが、これは咽頭反射という神経の反射を利用した嘔吐です。
普通、嘔吐は上記のように吐き気とともに起こりますが、吐き気がなくても、胃の出口に腫瘍などができて狭くなると、胃の内圧が上昇し、結果的に嘔吐してしまうことがあります。胃、腸、胆嚢などに炎症がある場合にも嘔吐は起こります。
また、心因性嘔吐と呼ばれるものもあります。過食症の場合は意図的な嘔吐を繰り返してしまいますが、登校拒否時にみられる嘔吐の場合は、本人が意図せずに条件反射的に嘔吐してしまいます。
外来では様々なケースを想定して診察をしますが、レントゲンや血液などに現れにくい心理的な原因による嘔吐まではすぐに原因を発見できないのが実情です。どういった状況で吐き気を感じるのか、吐いてしまうのか、という点を伝えてもらうことで、よりスムーズに原因を解決し、正しい治療を行うことができます。来院する前に自分の症状をきちんと把握してまとめておくと、より迅速かつ的確な治療を受けられることにつながります。