悪性胸膜中皮腫はなぜ50~60代に多いのか?

タバコ
アスベストと喫煙のリスクが重なると相乗効果で肺がんの危険性も高まります
1970年代から90年代にかけて年間30万トンものアスベスト(石綿)が輸入され、主に建築物の材料として国内で加工・使用されてきました。この時期に直接アスベストを扱った人やその家族(傍職業性家庭内曝露と言います)、工場の近隣住民、アスベスト吹き付け型の建材等を使用していた場合には、今後も何らかの健康障害が出現する危険性があります。

悪性中皮腫は主に肺を覆う膜、胸膜に発生する悪性腫瘍です(心臓の膜、稀ながら腹膜や精巣鞘膜にも発生することがあります)。肺を覆うようにして広がってくるのが特徴で、
時には1~2週間のうちに急速に広がることもあります。一説には、2~5μmというスギ花粉よりも小さなアスベストのかけらが空気と一緒に吸い込まれ、長年にわたって細胞を刺激し続けることが原因で発生すると言われています。

その期間はアスベストへの曝露から約30~50年、つまりアスベストが最も多く扱われた時代に働き盛りの青年層、現在50~60代の方に多い病気というのはこうした理由があるためです。なお、悪性胸膜中皮腫の自覚症状は、胸痛や呼吸困難感が多く、進行した場合には肩やお腹にまで痛みが広がることや、発熱・体重減少・咳を伴うこともあります。


40代後半から50代は胸水がみられることも

アスベストの健康障害は悪性中皮腫だけではありません。胸に水がたまることや(胸水貯留)、肺がかたくなり機能できなくなってしまうこともあります。胸水は悪性中皮腫だけでなく、肺炎や心不全、肺がんなど様々な疾患の合併症としても見られますが、アスベストへの曝露が原因となることもあります。曝露から発症までの期間は約20~40年、中皮腫の発症年齢よりもやや若い年齢層で見つかることが多いようです(注意:曝露から10年以内に胸水が見られることもあります)。

肺内にアスベストによる変化が認められ、かつ胸水の検査で明らかな異常が発見されない場合には良性(石綿)胸水と診断されます。少量の胸水であれば日常生活に影響もないのですが、こうした方の多くは肺の至るところにアスベストの影響が潜んでいることもあり、ちょっとした歩行・運動を行うだけでも息切れ・呼吸困難感がみられることがあります。


胸水を調べる方法は、針で水を抜く(胸腔穿刺:きょうくうせんし)、胸腔鏡(内視鏡)手術、という2つの方法が代表的です。仮に悪性胸膜中皮腫が原因の場合には、針で水を抜く検査によって20~30%、手術によって90%以上の確率で診断が可能です。体にかかる負担の少ない胸腔穿刺を行い、必要であれば胸腔鏡手術という順番で行われることが多いようです。


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