勝手に体重減少するのは病気の症状か

体重計に乗る人

ダイエットに励んでいるわけでもないのに体重が減っていく……病気が原因で体重が減少することもあります

メタボリックシンドロームという言葉も一般的になり、男女を問わず、健康診断の結果を気にされる方は多いと思います。メタボ対策の中でも、適性体重の維持はやはり大切。移動手段も便利で運動不足気味になる方も多い飽食の時代、どうしても体重がオーバーしてしまいがちなのは、現代人共通の悩みかも知れません。

一方で、「何に気を付けているわけでもないのに体重が減っていく」「周囲に痩せたと言われるけれど特に食事や運動に気を配っているわけではない」といった場合には、喜んでばかりはいられません。急な体重減少の陰には、何らかの病気が潜んでいる恐れがあるからです。不可思議な体重減少が起こっている時の注意点について解説します。

身に覚えのない体重減少は病気の危険サイン?

不可思議な体重減少は要注意
がん診療の立場から言えば、不可思議な体重減少は要注意のサインなのです
生活習慣病予防に大切な「体重コントロール」。しかし、不可思議な体重減少は、がん診療の立場から申し上げると要注意です。実際に、医師である私自身が医学部の学生実習で何度も教えられたのは、「がん患者さんの問診では、体重変化を良く聞くように」ということでした。

病気によって体重が減ってしまうのは何故なのか、まずは体重減少とカロリーの関係から説明していきましょう。体重減少のメカニズムは、ある3つのカロリーについて考えるとよくわかります。

「基礎代謝量」とは? 体重を左右する3つのカロリー

体重とカロリー
ダイエットについて考える時には、体重を左右する3つのカロリーを押さえておくとわかりやすいでしょう
体重を減らすためには、「食べる」カロリーを減らして、「運動」カロリーを消費する。これは誰もが知っているダイエットの鉄則でしょう。確かに、食べてばかりで動かない生活が体重オーバーの原因になることを身をもって体験されている方も多いのではないでしょうか。

実はこの2つのカロリーの他に、もう1つ体重に関与するカロリーがあります。これは「基礎代謝量」というもので、言うなれば「じっとしていても消費されるカロリー」のことです。食物で摂取するカロリーよりも、運動で消費するカロリーと基礎代謝で消費されるカロリーの和の方が少なければ、カロリー過剰な状態になり、体重はどんどん増加していくのです。脂肪は、カロリーを最も効率的に蓄えることができるので、内臓脂肪も皮下脂肪もついて行くわけです。

つまり、体重減少が起こるということは、摂取するカロリーよりも運動で消費するカロリーと基礎代謝のカロリーの和の方が大きく、1日のカロリーの差し引きがマイナスになる状態が続いているということ。食事の量を減らしたり、運動量を増やした覚えがないのに、体重が減少している場合には、注意が必要です。

がん診療の立場から考える不可思議な体重減少のリスク

がん細胞は大量にエネルギーを消費する
がん細胞は通常の細胞よりも早いスピードで増えていきます。そのために、大量のエネルギーを必要とします
前述した体重とカロリーの関係をもとに、がん診療の立場から体重減少の危険性について考えてみます。身に覚えのない体重減少から考えられるリスクは下記の2点です。

■食べているつもりでも摂取カロリーは少なくなっている
自分ではしっかり食べているつもりでも、痛みや消化器の不調により実際の摂取カロリーが減少している恐れがあります。消化器系のがんの場合には、みぞおちの痛みや下痢などの消化器症状で、知らず知らずのうちに食事量が減っていることがあり、そのような場合には当然、体重が減少していくのです。

■じっとしていても消費カロリーが増えている
考えられるのは、がん細胞の性質によるもの。がん細胞の存在は、基礎代謝として消費するエネルギーの量を増大させます。がん細胞は、正常の細胞よりも増殖・成長のスピードが速いケースが多いです。すなわち、がん細胞が体内に存在する場合には、それだけ多くのカロリーを、じっとしていても消費していくということになります。

肝臓や肺など、かなり大きくなっても臨床的な症状がでないケースでは、著明な体重減少(通常は、数ヶ月で10~15%の体重減少)を契機に色々と調べてみることで見つかる場合もあります。

もちろん、甲状腺機能亢進症のように悪性疾患以外でも基礎代謝量が増大するケースもありますし、疾患とは全く関係のない場合もあります。心配しすぎる必要はありませんが、不可思議な体重減少が認められる場合には、念のため、医療機関を受診しておくことが良いと思います。
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