癌(がん)/がんの初期症状・早期発見

体重が減るのはがんのサイン?体重減少と病気の関係

【医師が解説】体重が減るのは病気のサイン? ダイエットをしていないのに急に痩せた場合、知らないうちに食が細くなっていたり、基礎代謝として多くのカロリーを消費するがん細胞が存在したりすることもあります。がん診療の立場から、体重減少の危険性について解説します。

狭間 研至

執筆者:狭間 研至

医師 / 癌ガイド

急に痩せた、体重が減った……がんなどの病気が原因で起こる体重減少

体重が減るのはがんのサインか…体重減少と病気

ダイエットに励んでいるわけでもないのに体重が減っていく……病気が原因で体重が減少することもあります


メタボリックシンドロームという言葉も一般的になり、男女を問わず、健康診断の結果を気にされる方は多いと思います。メタボ対策の中でも、適性体重の維持はやはり大切。移動手段も便利で、運動不足になる方も多いこの飽食の時代、どうしても体重がオーバーしてしまいがちなのは、現代人共通の悩みかもしれません。

一方で、「特に気を付けているわけでもないのに体重が減っていく」「食事や運動量も変わっていないはずなのに、周囲に痩せたと言われる」といった場合は、喜んでばかりもいられません。急な体重減少の陰には、何らかの病気が潜んでいる恐れがあるからです。原因不明の体重減少が起こっているときの注意点について解説します。
 
<目次>
 

体重が減るのは病気が原因のことも

体重が減るのは病気が原因か

体重が減るのは病気が原因か

生活習慣病予防に大切な「体重コントロール」。しかし、不可思議な体重減少は、がん診療の立場から申し上げると注意が必要です。実際に、医師である筆者自身が医学部の学生実習で何度も教えられたのは、「がん患者さんの問診では、体重変化をよく聞くように」ということでした。

病気によって体重が減ってしまうのは何故なのか、まずは体重減少とカロリーの関係から説明していきましょう。体重減少のメカニズムは、3つの「カロリー」について考えるとよくわかります。
 

基礎代謝量とは? 体重が減る理由の理解に必要な「3つのカロリー」

体重を減らすためには、「食べる」カロリーを減らして、「運動」カロリーを消費する。これは誰もが知っているダイエットの鉄則でしょう。確かに、食べてばかりで動かない生活が体重オーバーの原因になることを身をもって体験されている方も多いのではないでしょうか。

そしてこの2つのカロリーの他に、もう1つ体重に関与するカロリーがあります。これが「基礎代謝量」というもので、いうなれば「じっとしていても消費されるカロリー」のことです。

食物で摂取するカロリーよりも、運動で消費するカロリーと基礎代謝で消費されるカロリーの和の方が少なければ、カロリー過剰な状態になり、体重はどんどん増加していくのです。脂肪は、カロリーを最も効率的に蓄えることができるので、内臓脂肪も皮下脂肪もついてくるわけです。

つまり、体重減少が起こるということは、摂取するカロリーよりも運動で消費するカロリーと基礎代謝のカロリーの和の方が大きく、1日のカロリーの差し引きがマイナスになる状態が続いているということ。食事の量を減らしたり、運動量を増やした覚えがないのに、体重が減少している場合には、注意が必要です。
 

がんなどの病気で体重が減る理由

前述した体重とカロリーの関係をもとに、がん診療の立場から体重減少の危険性について考えてみます。身に覚えのない体重減少から考えられるリスクは、下記の2点です。

■食べているつもりでも摂取カロリーは少なくなっている
自分ではしっかり食べているつもりでも、痛みや消化器の不調により実際の摂取カロリーが減少している恐れがあります。

消化器系のがんの場合には、みぞおちの痛みや下痢などの消化器症状で、知らず知らずのうちに食事量が減っていることがあり、そのような場合には当然、体重が減少していくのです。

■じっとしていても消費カロリーが増えている
考えられるのは、がん細胞の性質によるもの。がん細胞の存在は、基礎代謝として消費するエネルギーの量を増大させます。がん細胞は、正常の細胞よりも増殖・成長のスピードが速いケースが多いです。すなわち、がん細胞が体内に存在する場合には、それだけ多くのカロリーを、じっとしていても消費していくということになります。

肝臓や肺など、かなり大きくなっても臨床的な症状がでないケースでは、明らかな体重減少を契機に色々と調べてみることで見つかる場合もあります。この場合の体重減少とは、通常は数カ月で10~15%の体重減少を指します。

もちろん、甲状腺機能亢進症のように悪性疾患以外でも基礎代謝量が増大するケースもありますし、疾患とは全く関係のない場合もあります。心配しすぎる必要はありませんが、不可思議な体重減少が認められる場合には、念のため、医療機関を受診しておくのが良いでしょう。

【関連記事】
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます