癌(がん)/がんの3大療法・その他の最新療法

がんはなぜ、転移する?3大療法のポイント(2ページ目)

がんの治療中に、医師にとっても患者さんにとっても一番の気がかりは、転移です。なぜ、元の場所とは違ったところにがんができるのでしょうか?その理由がわかればがん治療の考え方がわかります。

狭間 研至

執筆者:狭間 研至

医師 / 癌ガイド

がんのメカニズムから見た3大治療法のポイント

がんのメカニズムと3大療法
がんのメカニズムを考えると、がんに対する3大治療法のポイントがわかります
がんは、最初にできた場所で大きくなりますが、一方で、境界を乗り越え血管やリンパ管を食い破り、血液やリンパ液の流れに乗って、全身を巡ります。

そして、どこか別の場所で血管に接着し、そこでもまた血管を食い破って増殖し、転移をおこします。

このようなメカニズムのがんを治療するために、3大療法はそれぞれ、工夫や理由を持っています。手術療法・放射線療法・抗がん剤治療のそれぞれのポイントを以下でご説明しましょう。

まず、手術療法では、腫瘍だけをくり抜くのではなく、腫瘍から十分に距離をとって大きめに切除する必要がでてきます。なぜなら、まわりの組織に浸潤しているために、目で見てわかる範囲では、取り残してしまう心配があるからです。胃がんの手術で、がんだけを切り取るのではなく、胃全体や、4分の3を切ってしまうのは、こういったことが理由です。

また、放射線療法では、このような取り残しや転移が疑われる場所に放射線を照射することで、がんの再発を予防したり、痛みを軽減したりすることを目的とすることが多いです。
しかし、これらはいずれも、限局された場所に対する治療法であり、全身の血管の中をころころと転がっている状態には、なかなかよい効果が期待できないというのも実際のところです。


全身にお薬が行き渡るのが抗がん剤治療

抗がん剤治療の特異性
血管内やリンパ管内をころころと転がっていくがん細胞について直接効果があるのは、抗がん剤治療の特徴です。
一方、がんの治療に、抗がん剤を用いる理由は、血管やリンパ管などの中をころころとまわっているがん細胞に対して、血管内に投与された抗がん剤は、全身を巡るため全体的に効果を得ることが期待できるからです。

近年では、進行したがんに対して、まずは抗がん剤治療を行い、大きさを小さくしてからしっかりした手術を行う場合もあります。しかし、基本的に手術の後に補助的に抗がん剤治療が行われてきたのは、これが理由なのです。

ただ、抗がん剤治療には、正常な組織にも抗がん剤の影響が出てしまうという難点があります。脱毛や吐き気、白血球数の減少などの症状は、抗がん剤のネガティブな一面でもあります。しかし、近年、これらの副作用を軽減するための方法は数多く開発されつつありす。

抗がん剤の世界は、まさに日進月歩なので、あと5年もすると、副作用が少なく、がん細胞には確実に効果の上がるお薬やその使用方法が開発されているかも知れませんね。


【関連リンク】
がんの基本的な性質を知ること ⇒良性腫瘍と悪性腫瘍の違いって?(All About がん・がん予防)

がんのできるメカニズムについて解説
 ⇒誰でもわかる「がん発生のメカニズム」(All About がん・がん予防)


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