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膵島移植、あれから一年

手術が簡単で失敗しても再手術で摘出する必要がない『膵島』移植が現実味をおびてきました。移植を受けたカナダの15人は1年後も元気です。

執筆者:河合 勝幸

インスリンを作るベータ細胞が機能しなくなってしまった1型糖尿病者にとって、膵臓移植は夢の世界です。でもカナダのアルバータ大学で成功した事例は、注目に値するものです。膵臓の中でも、ベータ細胞がある膵島(ランゲルハンス島)だけを精製し、それを大きな注射器で肝臓の門脈という太い血管に注入する方法です。
カナダの、あの感激の発表から1年が経過しました。膵島移植を受けた15人はどうなっているのでしょう。

15人中3人の移植者がインスリン注射が必要になっています。それでも手術前の1/5量といいますから移植した膵島はまだ機能しています。
膵臓そのものの移植はアメリカを主に、今まで10,000例はありますが、日本では十数例にすぎません。膵臓はタンパク質などを分解する外分泌器官でもあり、その膵液の処理と強い拒絶反応があるため、他の臓器移植よりも難しくて費用も掛るのです。

膵島移植は既に世界で400例は行われましたが、これほどの大成果をあげたのはエドモントン(カナダ)にあるアルバータ大学が初めてです。いろいろな独創的な手法を開発したので、その方法を『エドモントン・プロトコール』と呼ぶようになりました。

まず、ドナーの膵臓から膵島を精製して取りだす技術をマイアミ大学(アメリカ)と共同で開発しました。移植を受ける人の体重1キロあたり10,000個の膵島を目標にしました。これは前例のない大きな数値で、膵島そのものが健常者でも1人あたり百万個と考えられているので、限りなく健常者に近い膵島を十分に移植しようとするものです。マイアミ大学の技術ではドナー2人で1人の移植ができます。以前は患者1人に7人のドナーが必要だったのですから当時は膵島移植は非現実的な問題だったのです。

移植する場所も『肝臓』とユニークです。かつては腎臓、脾臓、腹腔などが試されましたが、移植した膵島は短命だったのです。
肝臓はとても大きな臓器なのでティースプーン2~3杯の膵島を受け入れる余地があります。そして肝臓自体もダメージを受けないようです。なによりも豊富な血流があること。

免疫抑制剤も非ステロイド系の3種類の新薬が使われています。そのうちの『タクロリムス』は日本で開発されたものです。ステロイドは移植を妨げて、インスリンの反対の作用を持つホルモンですから不適切なのです。
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