糖尿病/糖尿病の経口薬・インスリン

インスリンで太った・体重増加したと感じる3つの理由

「インスリンのせいで体重増加してしまった」「インスリン注射をしたら太った」……おやおや、全てをインスリンのせいにしてはいけませんね。でも、確かにあなたがそう思ってしまう理由があるのです。インスリンで太ったと感じてしまう理由として、糖毒状態と水分バランス、リカバリー生産、空腹感からの大食いの3つの観点から解説します。

執筆者:河合 勝幸

「インスリンを使うと太る」は本当か

太って悩む男性

「太ってしまったのはインスリンを使ったせいだ……」。それは果たして本当でしょうか?

「インスリンを使い始めてから太った……」という声を耳にすることがあります。

おやおや、全てをインスリンのせいにしてはいけませんね。でも、確かにあなたがそう思い込む理由はいくつかあるのです。

インスリンを使わないうちは、何もしてないのに体重が落ちてしまったことがある糖尿病者は大勢いるでしょう。いや、むしろ急にやせてきて糖尿病が見つかるというケースがとても多いのです。

インスリンが十分に分泌されない、あるいはインスリン・レジスタンスといって、インスリンが十二分に出ているのによく効かない状態になると、気づかないうちに高血糖になってしまいます。高血糖になると、ベータ細胞からのインスリン分泌が減るので、ますます血糖値が上がるという悪循環に陥ります。これがいわゆる「糖毒症状」です。

インスリンで太ると感じる理由1:糖毒状態と水分バランス

糖毒状態のからだは、過剰なブドウ糖を尿糖としてせっせと排泄します。このため多尿、頻尿、のどの渇きが起こります。

いくら水を飲んでも、からだは本当は脱水状態が続いてしまうのです。
水分が体から減る分、体重は落ちます。ですから、インスリンで血糖が正常に戻れば、からだの水分バランスも元に戻り、体重が増えたように感じてしまうのです。

これがインスリンで体重がすぐ増える第1の理由です。

インスリンで太ると感じる理由2:リカバリー生産

ブドウ糖は大切なエネルギー源ですが、糖毒状態の時はからだの筋肉や脂肪細胞の中に取り込まれません。

そこで、からだは脂肪をどんどん分解して「ケトン体」というエネルギー物質を肝臓で大量に作り始めます。これはブドウ糖の代わりに脳神経細胞でもエネルギー源になります。脂肪を水に溶ける物質に作り替えたともいえますが、たくさんあると血液を酸性に傾ける危険なものでもあるのです。

ケトン体が血糖コントロールの悪さを表すマーカーであるのはご存知ですね。この状態のときは特にからだがブドウ糖を必要としているので、貴重な筋肉のタンパク質を分解してまでもブドウ糖を作り始めます。
脂肪や筋肉をどんどん分解するから、なにもしないのに体重が減ります。

血液中には尿から排泄するほどブドウ糖があふれているのに、皮肉なことに、細胞の中はブドウ糖の欠乏状態です。昔の人は糖尿病を「体が溶ける病気」だと思ったのですよ。

インスリン治療をすると正常に戻るので、からだは失った筋肉などのタンパク質や脂肪を取り戻すために、リカバリー生産に入ります。インスリンは筋肉細胞にアミノ酸を取り入れてタンパク質を作りやすくします。また、ブドウ糖を中性脂肪にしたり、遊離脂肪酸を脂肪細胞に取り入れる働きがあります。再生産された分、体重が増えたと感じてしまうのです。

インスリンで太ると感じる理由3:空腹感と大食い習慣

糖毒状態の時はいくら食べてもエネルギー源であるブドウ糖が尿糖として出てしまいますから、いつでも空腹感があります。「先生、こんなに食欲があるんだから、オレはどこも悪くないよ……」と言いたくなるかもしれませんが、知らず知らずに尿糖が出ている高血糖を長年続けていると、間違いなく大食いの習慣が身に付いてしまいます。一人前の分量がなんでも大盛りです。

この食習慣にインスリン量を合わせれば……本当に太ってしまうのは目に見えています!

スタイルが気になる1型の若い女性が、内緒にインスリンを減らして、尿からケトン体が出るようにすると短期に激ヤセできます。でも、血糖コントロールを取り戻すと、上記の理由ですぐ元に戻ります。でも、筋肉は努力なしでは元に戻りません。

ですからたぶん、元よりも脂肪体質になります。インスリンやSU剤で増える体重の65%が脂肪、35%が筋肉などの脂のない組織です。そして長期的にみれば、残念ながら合併症のリスクも高まってしまうのです。

インスリンで太り始めたら、とことん医療チームと話し合って問題点を見つけてください。インスリンは悪者ではなく、神様からの贈り物なのですから。

以上は医学的に根拠のある話ですが、私の個人的な感想では「太りやすい人」はインスリン導入と共に「ローファット食」に切り換えるのも選択肢だと思うのです。今まで苦労してきた炭水化物、すなわちブドウ糖はインスリンで対応できますから、容易にローファット・ローカロリー食が実行できます。そして、インスリンを減らしながら運動量を増やすのです。

でも、ローファット食って個人的にはあまりおいしくないんだなぁ……。それが悩みのひとつですが……。

まとめ

インスリンで太るのは、他にも理由があります。一つは血糖コントロールがつくと、基礎代謝量が減ることです。また、ブドウ糖やケトン体を尿として捨てなくなるので、体重減が止まります。低血糖の補食でも太ります。低血糖の回復にはタイムラグがあるので、どうしても食べ過ぎてしまうのです。
食事のカロリーを減らさないまま、インスリン強化療法に入ると、まず、太ると思ってください。血液中のインスリン濃度が高いと、脂肪細胞にはブドウ糖を脂肪として蓄えるというサインになるのです。体の中の細胞で一番インスリンに対して感度が高いのは脂肪細胞なのですから。

その対策は、初心に戻ってもう一度生活習慣を変えることですね。
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