加齢と共にひざの関節がすり減って痛くなります。駅の階段をつらそうに昇り降りしている姿をよく見かけますね。そこで痛みを軽減するサプリの登場です。皆さんもいろいろ知っていますよ。グルコサミン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸etc……これらは「ムコ多糖」といわれるものです。
グルコサミン
グルコサミン(glucosamine)というのは、その名の通り、グルコース(ブドウ糖)の第2位の炭素にアミノ基がついたものです。なじみがありませんが、「アミノ糖」といわれます。アミノ糖にも種類がありますが、それらが長く連結してタンパク質や脂質などと共に丈夫な"編み物"のようなものになります。これが関節の軟骨の成分となります。
ですから軟骨成分の原料であるグルコサミンやコンドロイチン硫酸をサプリとして取れば、すり減った軟骨の修復ができるのでは?と考えられますね。グルコサミンが軟骨を修復し、コンドロイチンが軟骨の減少を防ぐという仮説があります。
どういう仕組みでそうなるのか不明ですが、ウサギによる動物実験では効果がありそうだというレポートがあります。若いウサギの片方のひざを傷つけて、人間の1日のサプリ相当分のグルコサミンを8週間与えたところ、健康なひざは変わりがなかったけれど、傷つけられたひざでは軟骨を構成する「プロテオグリカン」(少量のタンパク質に多数のムコ多糖が結合したもの)が明らかに増えたというものです。
人間ではサプリを服用した結果の自己評価が調べられていますが、痛みが軽減したとする人や変らないとする人もいます。専門家の意見では「効果がありそうだけど、なんにもならない可能性も残っている」というところです。
グルコサミンは血糖を上げる?
グルコサミンはインスリン抵抗性(インスリンがよく効かない状態)を高めるという論文がかなりあります。しかし、1日あたり1,500mgのグルコサミンと1,200mgのコンドロイチン硫酸のコンビネーションサプリ程度では糖尿病の血糖に与える影響はまずないだろうという論文もあります。
関節痛に苦しむ糖尿病者はまずは安心ですね。しかし、このJAMAの結論は「コントロールがいい糖尿病には」という条件がついています。このサプリを取っていて、しかも血糖コントロールの悪い人は、もしかすると影響があるのかも知れないのです。
グルコサミンが「インスリン抵抗性」を増悪する機序はとても難しい話です。血糖値がとても高い、いわゆる「糖毒状態」ではインスリン分泌も減り、インスリンの作用も低下します。グルコサミンがそれに関連していると考えられています。
インスリンが細胞のインスリン受容体に結びつくと、細胞内で次から次へとシグナルが伝えられて、最後にグルコース(ブドウ糖)を取り入れる輸送担体が細胞膜上に現われるのですが、細胞内にあまりにもグルコースやグルコサミンがあると、その作用を担うタンパク質にそれらがくっついてしまって、伝達がストップしてしまいます。インスリン抵抗性とはその状態ではないかという仮説があります。グルコースやグルコサミンから作られるその悪玉が、「なんとか・なんとか・グルコサミン」というのですが、その名前を知りたいでしょう?「O-linked beta-N-acetylglucosamine」、略して"Oh-gluk-nack"(オー・グルク・ナック)といいます。なんとも、うんざりする名前ですね。
グルコサミンは危険なものではありませんが、妊娠中の女性、子供、かなりの高齢者は対象となった研究があまりありませんから避けたほうが無難です。
また、コンドロイチンには血液を凝固しにくくする作用がありますので、すでにワーファリンやヘパリン、アスピリンなどの療法をしている人はコンドロイチンの合剤は注意が必要です。手術時の大出血にも警告が出てます。
吐き気、下痢、胸やけ、ほてり、頭痛などの副作用の可能性も指摘されています。