糖尿病/著名人と糖尿病・糖尿病闘病記

インスリンポンプのゴルファー

2002年のライダーカップ(ゴルフ)で活躍したスコット バープランク(アメリカ)はインスリンポンプで1型糖尿病をコントロールしています。その秘密は…

執筆者:河合 勝幸

2002年9月27~29日、イギリスで開催されたプロゴルフの"ライダーカップ"はヨーロッパチームが宿敵USAを破って雪辱をはたしました。今大会はタイガーウッズの発言が物議を醸しましたが、アメリカチームの1人の選手の活躍が注目を集めました。

その人、スコット バープランク選手は現在のところ全米14位にランクされていますが、トップ10プラス2人のライダーカップチームには『キャプテン推薦』で選ばれました。90年代にはひじの手術で18ヵ月もプレーできませんでしたが、もう一つ、スコット バープランクには大きな障害があります。実は子供の頃から1型糖尿病と闘ってきたのです。どん底から何度もはい上がってきたタフな精神力と、欠点のない素直なゴルフが推薦のポイントだそうです。
全米ゴルフ記者協会が選ぶ『ベン ホーガン賞』も今年の初めに授与されています。この賞は、身体の障害や重い病気を克服して活躍しているプロゴルファーに与えられるものです。

彼は3年前からMiniMedのインスリンポンプを使用しています。ポンプのお陰で血糖の乱高下がなくなり、プレーに集中できるようになってからコンスタントな成績が残せるようになりました。
アメリカ人にとってインスリンポンプは珍しいものではありませんが、ヨーロッパや日本ではそれ程普及していません。まず第一にポンプ本体が40万円以上する、かなり高価なものであること。そして健康保険がハードウェアをカバーしていないことが挙げられます。
ヨーロッパでもフランス、スエーデン、ノルウェー、オランダでは資金援助がありますが、イギリスですら現在は自費負担で、2003年の実現を目指している段階です。日本ではインスリンや使い捨て用具、血糖測定セットなどのメンテナンスの部分は健康保険でカバーされています。

インスリンポンプはカセットテープぐらいの小さな装置で、コンピュータ制御で0.1単位という微量インスリンをプログラム通りに正確に注入できるハイテク機器です。食事や高血糖の度にインスリン注射の儀式を行わなくて済む簡便さがあります。ボーラスインスリン(食事時のインスリン)はボタンを押すだけでOKです。たとえば2度ボタンを押すと、6単位のインスリンが2分間で注入できるようになっているものもあります。
インスリンは食事をしなくても常に一定量が血液中になくてはなりません。この基礎的なインスリン(ベイサルという)がプログラム通りに維持されるので、今までのように昼食や夕食の規定時間に縛られることがなくなりました。昼食を午前11時や午後2時に摂ることも可能になったのです。スコット バープランク選手はゲームに集中しても今は安全なのです。
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