糖尿病/2型糖尿病

2型糖尿病の治療が変わる

先進7ヵ国の2型糖尿病の治療の動向を調べた『ディシジョン・リソーシズ社』によると、新しい薬の組み合せによる治療が増えていることが分かった。また、糖尿病経口薬の市場は、7ヵ国で1998年には約5,000億円の規模であったが、年率2ケタの割合でのびており、2003年には8,000億円の市場になると見込まれている。

執筆者:河合 勝幸

民間の調査会社ディシジョン・リソーシズ社(アメリカ)が最新の2型糖尿病の治療の傾向と、先進7カ国における今後10年の市場予測を発表しました。

リサーチが行われたのはアメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス、日本の7カ国です。調査によると国によって治療法は大きく異なりますが、血糖値をより正常に近づけることを治療の大切な目的にしているのは同じだといいます。

20年にわたる年月と、5,000人の2型糖尿病のボランティア(被験者)、23ヶ所の病院の協力によるイギリスの2型糖尿病研究(UKPDS)があります。治療史に残る金字塔です。これによって明らかになったのは、2型糖尿病も血糖値をより正常に近づけることによって、細動脈の合併症(腎症など)や大動脈の合併症(心臓病など)から遠ざかることです。

多くの医師がこのUKPDSで高い評価を得たビグアニド剤(クラス名Biguanides。一般名としてはメトホルミン。商品名はグルコファージ、メルビン、グリコランなど)に処方がシフトしていると考えています。

次いでインスリン抵抗性改善薬(クラス名Thiazolidinediones ザイアゾリディーンダイオーン。武田薬品のアクトス商品名Actosなど)や、スミスクライン ビーチャムズ社のアバンディア(商品名Avandia)などが第一線に並んでいます。わずか5年前(1995年)まではインスリン分泌を強めるスルフォニル尿素剤がほとんどだったのですから、すっかり様変わりです。

今、1番ホットな話題は2型糖尿病症の初期の治療方法についての議論です。

糖尿病というのは基本的にインスリンが不足しているか、あるいはインスリンが有効に働いていないかの病気です。2型糖尿病の診断と治療法を決める時に、この両方があるのかないのか、あるいはその程度を見極めるのが現在でも難しいのです。そこに関心が集っています。

経口薬には血糖を下げる機序によるクラス名(5クラスある)と、成分による一般名、同じ成分の薬でも製薬会社によって異なる商品名(ブランド)がありますから注意してください。

さて、7カ国の経口薬の市場は1998年には約5,000億円の規模でした。今後5年間は毎年10%以上の高成長が続き、2003年にはこの7カ国だけでも8,000億円以上の市場になると予測されています。

10%以上の需要の伸びが見込まれている薬は以下の3つのクラスです。

1. ビグアニド剤(メトホルミン。日本での商品名はメルビン、グルコランなど)
2. インスリン抵抗性改善薬(ピオグリタゾン=武田のアクトスなど)
3. メグリチニド(速効性のインスリン分泌作用のある飲み薬。日本では未発売)

 注射の痛みのない吸入式のインスリンが実用化されれば大きな市場ができることは疑いのないところです。各製薬会社と研究所が初期臨床試験をクリアしてますから時間の問題です。
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