「インスリンを使いましょう」と言われたら……
医師から「インスリンを使いましょう」と言われたら、あなたは素直に「はい」と答えますか?誰だって本当は嫌ですよね!

「インスリン・レジスタンス」という言葉がありますが、これは高脂肪食や肥満などでインスリンの作用が低下(抵抗)することです。「心理的インスリン・レジスタンス」とはインスリン注射への抵抗です。

この心理的なインスリン拒否はごくありふれたものです。イギリスで行われた2型糖尿病の大規模調査(UKPDS)では、診断のついた糖尿病者をランダムに4グループに分けましたが、インスリンに振り分けられた人の27%は最初は嫌がったそうです。


インスリンを勧められたら、何て答えますか?

「とんでもない!注射なんてとても自分で出来ませんよ。針が怖いから」

私の知人に、こう言う人が何人もいます。こんな時、慈恵会医大の田嶼尚子教授は、生理食塩水の入ったインスリンペンをスカートの上から足に刺して「なんでもないのよ」とニッコリするのだそうです。このパフォーマンスで誰でもギブアップするそうです。

たしかに、本物の注射針のような、「尖った物に恐怖を覚える症状」があることは知られています。しかし、一方的に拒否すると医師をミスリードするかも知れません。アメリカの事例ですが、注射がまったくダメな人が1型糖尿病になってしまったことがありました。その人はカウンセリングで克服できたのです。でも、インスリンはどうも気が進まないと言うのであれば別のアプローチが必要です。

インスリンを始めたら、一生逃れられない?

「先生、あと2~3ヵ月待ってくれませんか?体重を減らしますから」

こんな哀願もありそうですね。そして、減量に失敗するとインスリンの恐怖から逃れるために病院を替えることまでしかねません。医師にすれば経口剤ではコントロールができないのだからインスリンがベストチョイスになるのですが、ご当人はそうは考えません。「インスリン」の宣告は、うまく療養ができなかった挫折感を伴なうのです。

「インスリンを始めたら、一生逃れられない」と思い込む人もいます。これは2型糖尿病のことを理解していないからですよ。2型糖尿病はゆっくりと進行するのです。加齢と共にインスリンの分泌能力は更に低下します。そもそも遺伝と年齢はあなたの心掛けとは関係ないのですから、糖尿病もインスリンも自分のせいにすることではありません。

糖尿病者の心を重視したソフトランディングが必要

理性で考えれば経口剤でA1C(過去2~3ヵ月の平均血糖値)を8%にするよりも、インスリン療法で7%にしたほうがいいに決っています。インスリンペンは正確だし、細くて短い針は神経に当らない限り「無痛」そのもの。最初は適正なインスリン量を把握するために血糖自己測定が必要です。医師の判断のため、ひいては自分自身のためですから、いろいろ工夫してみてください。

私は2型はインスリンが足らないのだから、その時機になったらその分を補充すればいいと考えています。ですから、一度に経口剤からインスリン4回打ちというようなドラスティックな変更には異を唱えています。医師は数値ではなくて、糖尿病者の心を重視したソフトランディングを考慮すべきです。

日本では残念ながら経口剤とインスリンの併用のガイドラインはありません。欧米では経口剤の最大投与でもA1Cが6ヵ月以上7%を超えているのなら、インスリン治療の対象になるようです。基礎インスリンのグラルギン(ランタス)から始める選択肢もありますよ。1日1回ですから、痛くもかゆくもありません。
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