不妊症/不妊症の基礎知識・治療法・薬

オランダの厚生大臣視察と不妊意見交換会(3ページ目)

このたび、オランダの厚生労働大臣Mr.Hans Hoogervorst氏が日本に来られました。そして加藤レディースクリニックでの視察と不妊治療についての意見交換会がありました

執筆者:池上 文尋

寺元副院長へのインタビュー

視察団が院内視察をしている間、寺元副院長へのインタビューをさせて頂きました。

Q)凍結保存をするとその保存した卵子の問題があると思うのですが処遇をどのようにしているのかを教えていただけますか?

A)年間1500周期の凍結を行っていますが、4年後のデータでは24%は2人目の妊娠のために活用されています。そして14%は廃棄しております。後の残りは患者の意思表示がまだ行われておらず凍結保存中となっています。卵子は患者さんとの信頼関係でお預かりしておりますので特に取り決めをしているわけではありません。よって離婚などの場合は患者さんの方からの自発的なご報告をして頂くようにしております。
PCO
ジャーナリストから寺元副院長へのインタビューの様子

また亡くなった夫の精子をどうするのか?という例を経験していますが、その場合は患者さんのご希望で廃棄しています。

Q)ニューヨークにクリニックをオープンされていますが、いかがですか?

A)2年目に突入しているNY分院ですが、症例数がどんどん増えて現在移転しより広いスペースを計画中です。妊娠率も徐々に高くなって来ています。

Q)遺伝子組み換え型のFSH製剤(フォリスチム)の治験も積極的に行われていると聞いておりますが、その内容を教えて下さい。

A)フォリスチムは去年発売されてそれ以来、色々な症例に活用しております。そしてフォリスチムで妊娠した方がこの8月に始めて出産をされます。それからはフォリスチムベイビーが続々と生まれてくる予定です。

フォリスチムと他のHMG製剤の効果の比較を無作為比較試験で実施しており、フォリスチムの有効性を確認しております。年齢は30~39歳でデータを取っております。
PCO
加藤院長、Mr.Hans Hoogervorst氏、寺元副院長の3ショット

フォリスチムを処方している理由は製品の純度が高く効き目の信頼性が高いと言う面と尿由来製剤のHMGやFSHは未知の感染症の危険性、特にBSEのプリオンを防止できないという面があるからです。しかし、フォリスチムは遺伝子組み換えのマウス細胞から抽出する薬剤ですからそういう危険なプリオンの混入はないと考えられますが、遺伝子組み換え製剤としての安全性はこれからも見守っていく必要があります。

Q)先程のHCGが不妊治療に悪影響を及ぼすという解説の部分を細かく教えていただけますか?

A)はい、HCGは調べてみるとどうも卵子成長の周期性を壊す作用があるとわかりました。通常の卵子がセレクトされる周期の中で数千の細胞から数十の細胞までセレクトされ、そしてその中から1個が月に一回排卵されるわけです。しかしHCGを打つとこの数十の卵胞の中に次の周期まで残るものが出てきます。

これはHCGというホルモンが卵胞を構成するある種の細胞の生存という方向に働く作用を持っているからです。もともと妊娠後に出てくるホルモンですからそのように作用することを理解するのは容易です。そうすると前の周期の卵胞が新しい周期の卵胞に出てくることになり、古い卵胞が育つことになります。これはいい卵子になりません。これは引いては高温期の撹乱にも繋がり、卵巣内の新旧の卵子が混在する事態を招きます。

またHCGはLHの分泌を抑えるので黄体ホルモンの分泌が減少し生理の間隔を短くします。これも卵子の発育周期を狂わせてしまうことに結びつきます。

全く始めて治療される方には効く療法ですが、治療を続けておられる方にはHCGのこの作用が蓄積しやがて良好卵子が発育した周期を繰り返すという悪循環になってしまうのです。

よって当院ではそのような患者さんが来られたら卵巣の状態を整える治療を行います。そして環境を整えた上で治療を行っていくのです。

まとめ

今回は貴重な機会をオルガノン社のご厚意で取材させて頂きました。どの国でも少子化の問題に頭を悩ませており、どのように子供たちを増やせばいいのか?新しい情報を求めておられることを痛感致しました。

加藤レディースクリニックも始めて取材をさせて頂きましたが、その患者数と独自の治療法への自信を知った一日でした。私自身、加藤レディースクリニックのような巨大不妊専門クリニックに対してはどちらかというと否定的なイメージを持っていたのですが、やはりきちんと内容を知っておくことは大事だなと思った今回の取材です。

なぜ多くの患者さんがこの施設にやってくるのか?それは子供を持ちたいという切なる願いです。それをいかにして救うのか?多くの人員と研究と資金を投下して実施している部分には他施設とは違う面があると感じました。日本発の技術が世界の多くの子供の誕生につながる今日のお話、非常に夢のある企画だと思いました。

また、こういうタイミングを逃さず、皆様に不妊治療の最新情報を伝えられるように取材を増やさなければと思った一日でした。

<関連サイト>
日本オルガノン株式会社

加藤レディースクリニック

以上
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます