★治療について
1)先生のところでの治療方法の選択肢とその妊娠率について教えてください。
私共のクリニックには毎年500~600名の新規患者さんが来られます。そのうちの100名強の人がタイミング法や簡単な薬物療法で妊娠されています。皆さん意外とそのことについてご存じないようです。状態にもよりますが治療はまず自然に近い状態での妊娠を試みるところから始めるのが原則です。
上記の治療を約半年~1年行っても妊娠しない場合、次のステップへ進みます。人工授精(AIH)です。ここで大体、毎年100名ぐらいの人が妊娠されています。人工授精はちょうど排卵した頃に運動精子を分離処理して子宮内に送り込む方法で、自然の場合より子宮内の精子濃度は1000倍近く多くなります。この状態にして受精、着床が起こるのを期待する方法です。精子が300万~500万./C㎥、運動率50%ぐらいの状況でも妊娠されるケースが多くあります。
そして上記のAIHを6~10回、行っても妊娠しない場合はIVFへと移行いたします。
精子が少ない場合には顕微授精(ICSI)を考えることになります。
通常の場合はある時間をかけてタイミング法、人工授精、体外受精というステップを踏んで治療を進めてまいりますが、35歳を越えて治療を急ぐ必要がある場合には各ステップを短めにした治療計画を考えますし、卵管が閉塞している等自然に妊娠できない状態が確認されている場合にはそれをクリアできる方法を最初から考えることになります。
体外受精の妊娠率の話ですが、どのような状態の人を対象としているのか、年代はどの年代なのかとかファクターと切り口でそのデーターは大きく変わります。
体外受精の適応基準が甘いと妊娠率は上がります。回数が増えるにつれ、また年令が高くなるほど妊娠率は下がります。妊娠率で施設の実績を評価しようという場合どういった条件での妊娠率かに留意する必要があります。
無精子症で精巣精子を用いた顕微授精の成績を比べるのが最も施設の実力を反映していると思います。顕微授精でしか妊娠する可能性のない絶対的な状態ですからどの施設でも適応基準は同じです。あとは女性側の年令と何回目かというファクターを考えれば同じ条件で比較できると思います。
2)先生ご自身、最近特に力を入れている治療はありますか?
現在特に力を入れている分野は男性不妊の治療です。泌尿器科専門医と協調して精子の状態の改善を図り自然に近い妊娠成立を試みています。また自然には妊娠を望めない無精子症の治療も泌尿器科専門医との連携で精巣からの精子回収率を高めることで妊娠できる可能性がかなり高くなっています。クラインフェルター症候群でも5例の妊娠例がでています。(ここの部分はかなり長くなるので次回の越田クリニック訪問記(2)で詳しくレポート致します)
3)生活の中で患者さんが妊娠しやすいようにするには何が大切だと思われますか?
まずストレスの少ない、リラックスした生活は大事でしょう。それから排卵期に交渉を持つことも大事です。意外とこれが実行されていないのです。
そしてその排卵日の特定をきっちりと見つけてくれる病院を見つける事が大事だと思います。
4)病院を効果的に活用するアドバイスがあれば教えてください。
妊娠成立のメカニズムを知って、また自分の状況を把握してどのようにして妊娠成立を目指しているのかを自分でもわかっていること大事です。どんな薬を用いて何をしようとしているのか等を担当医に説明してもらったらいいと思います。またタイミング法を半年くらいやってみて妊娠しないなら次はこうしようといった治療計画をあらかじめ聞いておくことも大事かと思います。
5)先生の治療におけるこだわりを教えてください。
過剰診療にならないように、また治療が遅くなりすぎないよう気をつけています。
6)カウンセリングの状況について教えてください。
ドクター、カウンセラー、ナース、エンブリオロジストと様々な専門分野で患者さんの質問や要望にお答えできるよう心がけております。そのケースにあわせて適切なスタッフが時間をかけてお話をさせて頂くようにしています。