50代の70%以上に感染 ピロリ菌とは?
十二指腸潰瘍の内視鏡写真です。潰瘍病変を採取して癌の合併やピロリ菌有無を調べます |
40代以上の中高年からの感染者が多く、若年者に少ないのは、戦後衛生環境(上下水道など)が整ってきたことが一因と考えられています。このピロリ菌は、胃・十二指腸内に炎症を起こして潰瘍の原因となるだけではなく、かつて日本人に最も多い死因であった胃癌を起こす危険因子だと考えられています。
胃潰瘍は感染症 ピロリ菌との深い関わり
病変部からピロリ菌が検出される率を見ると、胃潰瘍で約7~8割、十二指腸潰瘍では8~9割にも上ります。胃潰瘍の原因は胃酸過多・ストレス(肉体労働や睡眠不足を含む)・タバコ・コーヒー・香辛料と言われていましたが、こうした因子は潰瘍病変を悪化させるものであって、原因そのものにはピロリ菌の関与が大きいと考えられるようになりました。つまり、胃潰瘍は感染症であるという考えです(解熱鎮痛薬の常用による胃粘膜障害もありますが、複雑な説明となりますので今回は省略します)。このことを裏付けるかのように、抗菌薬などによってピロリ菌を除菌すると、胃・十二指腸潰瘍ともに9割以上で再発することがなくなりました。こうした消化管潰瘍も含め、ピロリ菌が感染していると判明した場合に、絶対に、もしくはどちらかといえば除菌したほうがよいとされる病気には現在のところ次のようなものがあります。
- 胃・十二指腸潰瘍
- 胃に発生するリンパ腫の一種(低悪性度胃粘膜関連リンパ組織リンパ腫)
- 萎縮性胃炎(なるべく早期のうちに)
- 胃ポリープ(過形成ポリープと呼ばれるもの)
- 早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除術後
胃癌による死亡率は年々低下してきましたが、胃癌の発生そのものが減っているわけではありません。胃癌の危険因子であるピロリ菌を見つける方法についてご紹介します。
次のページでは代表的なピロリ菌の発見方法をご紹介します。