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ブータンで進む奇妙な民主化

ヒマラヤの秘境・ブータンで進んでいる民主化計画。長年の伝統だった国王独裁が終わり、議会制民主主義が導入されようとしています。喜ばしいことかと思いきや、国民の顔色は今ひとつ?

執筆者:辻 雅之

もう1つのチベット、ブータン王国

ブータン地図
 
中国とインドのあいだにあるブータン王国。この国、人口の8割がチベット人なのです。17世紀、チベットの高僧がこの地を統一してできた国なのですね。

もっとも残りの2割がネパール人で、ブータン政府のチベット文化主義に対して反発するネパール人が反政府組織などを作り抵抗。多くの難民を生んでしまい、ネパールとブータンはあまり仲がよくありません。

1907年に国王として初代ワンチュク国王が即位していらい、現在は5代目のワンチュク国王が在位しています。今までは、国王による親政、つまり純粋な「王制」で国を運営してきました。

ちょっと奇妙な民主制移行

さて、1972年に即位した4代目のワンチュク国王は近代化を目指すなかで、「小国が生き残っていくためには、国王ひとりに権力を集中させてはならない」と考えました。

そこでこの前国王は政党を結成させ、総選挙を行わせて議会制に移行することにしました。昨年末には上院選を、そして今月24日、政権を決定する下院選が行われました。その間、前国王は今の国王に位を譲っています。

思いもかけない形で民主化が進んでいるブータンですが、国民の反応はやや戸惑い気味。ネパール系住民以外にとっては、王制がそれほど圧政でも苦しみでもなかったので、「何でこんなことするの?」という人も出る始末。

この「上からの民主化」が国民をうまくリードできるかどうか、注目です。

■関連サイト 国民総幸福って!? ブータン
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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