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4月総選挙、イタリア政治基礎知識2008(2ページ目)

イタリア政治が実は大変なことになっています。知らない人はいないイタリアという国ですが、その政治についてはあまり知られていませんね。イタリア政治の基礎の基礎、ここでお話しします。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【小党分立が続く近年のイタリア政治】
2ページ目 【イタリアの政治システム基礎知識】
3ページ目 【混迷続ける最近のイタリア政治情勢】

両院対等、イタリアの国会

イタリアの統治機構
かなり大まかなイタリアの政治システム。国会が首相の指名などはしない。
イタリアは上下両院からなる二院制です。政治情勢は下院の動きが重視されますが、基本的には上下対等となっていて、両院とも国民の直接選挙によって議員が選出されます。

また、上下両院議員とも任期は5年。下院については25歳以上、上院については40歳以上の有権者に非選挙資格が与えられます。

ただし上院には例外的に「終身議員」がいます。大統領経験者は必ず就任します。また、大統領は功労者を5人まで終身議員にすることができます。2008年2月現在、現在、上院には7名の終身議員が存在します。

国会は両方、またはいずれかの議院が大統領によって解散されることがあります。

国会議員以外でも首相になれる、イタリアの内閣(政府)

イタリアは基本的に議院内閣制であり、行政権は政府(内閣)の所管事項です。

国会が首相を指名し、組閣するということはありません。大統領によって首相が任命され、首相による閣僚の推薦に基づいて、大統領が閣僚を任命します。

ただ、憲法に内閣が国会両院の信任を必要としている規定を設けているので(第94条)、大統領は信任が得られない人を首相にするわけにはいきません。事実上、両院の多数党から(もっとも多党制のイタリアですから現実には多数の政党連合からですが)首相が任命されることになります。

内閣は成立後10日以内に国会両院に信任を求め、信任が得られれば晴れて政権の正式発足となります。

もちろん、国会による不信任も可能ですが、日本と違って不信任成立と解散・総選挙は直接には結びついていません。しかし、不信任が成立すれば政権は崩壊せざるを得ないので、結局のところ解散・総選挙となってしまうことが多いです。

他に重要な日本との違いは、首相が国会議員である必要がないということです。また、首相は閣僚を直ちに罷免することができません。

象徴というわけではない? イタリアの大統領

各国の大統領
主要各国の大統領の権限などの違い。
イタリアの国家元首は大統領です。ただし、政治システムは議院内閣制であるため、大統領は基本的には政治的な権限をふるうことはありません。

そういう意味では、イタリアの大統領はドイツの大統領と同じく、天皇や立憲君主制の国王のような象徴的な存在です。

ただ、イタリアの憲法制度上、大統領は結構仕事をしなければならないことがあります。

まず、内閣不信任が成立したからといって、自動的に国会が解散されるわけではないので、ここで大統領が出てきて解散を一時凍結し、新しい連立の枠組みを作るよう働きかけることがあります。

また、軍隊の統帥権は事実上のものとされており、特に戦争時においては大きな権力をふるうことができると考えられています(共和制になってから、イタリアが他国と戦争したことはありませんが)。

また大統領がアメリカ大統領と同じように議会に対し教書を送ることができることを考えると、イタリア大統領は「それほど象徴的ではない」といえることができるでしょう。フランス大統領より弱く、ドイツ大統領より強い、そんな感じでしょうか。

大統領は国会両院の合同会議によって選出されます。この会議には州議会から3名の代表者(ヴァレ・ダオスタ州のみ1名)が出席、選挙にも参加します。

大統領の任期は7年で、50歳以上の有権者に被選挙資格が与えられます。

最後のページでは、国民投票の制度、そして迫ってきたイタリア総選挙の情勢について次のページでみていくことにします。
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