2ページ目 【三位一体改革が実行され、何がどう変わったのか】
3ページ目 【これからの三位一体改革、課題と問題点はなにか】
地方は損? とりあえずの「三位一体改革」実現
2005年末の決定に従って行われた三位一体改革の全体像。これだと地方の資金が減っているように見えるが、果たしてこれはどうなのか。 |
(1)国の補助負担金削減 4.7兆円
(2)地方交付税抑制 5.1兆円
(3)税源移譲 3兆円
なにかおかしいと思う方も多いでしょう。ようするに国から地方への資金は合計で9.8兆円も減らされているのに、地方が自分の手にしたお金は、3兆円にすぎないのです。「これでは三位一体ではないのではないか」という批判も起こりました。
この説明は、このようになされています。まず、そもそもこれが行政サービスとして必要なのか、そういうことを細かく検討して、「スリム化」を行った。また、(1)の補助負担金は、一部交付金(つまり自由に使える国からのお金)となっているので全てが減っているわけではない。
また、地方交付税の金額というものはそもそも総務省が行う「地方財政計画」のなかで決まってくる。これをシビアに見直した結果、地方の無駄も省き、交付税のスリム化が実現した。
しかし、この説明についても批判がないわけではありません。特に地方交付税については、抑制がきつすぎるという声は地方から相次いでいます。財政が厳しくなったという自治体は多いですし、「国の赤字を地方におしつけただけではないか」という不満もあがっています。
補助負担金削減の内容
国の補助負担金削減の中身はどのようなものなのでしょうか。金額の大きなものをあげてみると、・義務教育国庫負担 4,217億円
・国民健康保険国庫負担 6,862億円
・児童手当国庫負担金 1,578億円
・児童扶養手当国庫負担金 1,805億円
(児童扶養手当:父親の養育を受けられない母子家庭を対象とした手当)
このようになっています。
もちろん、これらは「税源移譲」によって現在よりも地方の裁量権が増えているということであって、額が減ったりなくなったりするわけではありません。
しかし、そうはいってもこれらは「地方に移譲されても、地方にはあまり裁量の余地がないもの」であるものが多いのが問題との声があります。
たとえば教育については教科書検定制度や学習指導要領などでかなり現場は拘束されていますし、医療については高齢化が進めばどうしても医療費は多くなってしまいます。子供の数、シングルマザーの数の操作などはできるはずもありません。
このようなことから、「もっと裁量性の高い補助負担金を移譲してほしい」という声も地方からは聞かれます。また、国民健康保険の負担金削減によって市町村と東京23区が運営者(保険者)である国民健康保険料の地方格差なども心配されています。
さらに厚生労働省は、2005年では見送られた生活保護負担金の削減も検討しているようです。すでに生活保護の減額が決まっていますが、憲法上の権利である「生存権」の保障もふくめ、今後議論となっていくでしょう。
「税源移譲で増税?」騒動のしくみ
税源移譲にともなって住民税改革が行われた。下が改革後のイメージ。金額は実収入ではなく課税される所得。課税所得200万円の人の実際の給与所得は568万円。 |
税源移譲の主な対象となったのが所得税と住民税でした。これまではどちらも累進課税、つまり高所得だと税率が高く低所得だと低かったわけですが、三位一体改革によって住民税は一律税率になりました(図を参照してください)。
これで、課税所得が低い(というより平均的な)一般のサラリーマンなどは一気に住民税が上がってしまったわけです。もちろんその分だけ所得税は減っているのですが、同時に国が定率減税を廃止してしまったため、今年でいうと「増税」になってしまったわけです。
しかし、所得税から住民税への税源移譲は必要なこととはいえ、これはこれで問題点が指摘されています。つまり、住民が多い自治体はいいが、少ない自治体にはあまり恩恵がない。それで地方交付税も補助負担金も減額されているから、けっこうキツキツになっているわけです。
所得税ー住民税以外の税源移譲についてはなぜ実現しないのか、次のページでみていくことにします。