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今こそ知りたい・集団的自衛権(3ページ目)

集団的自衛権についての議論がここ近年盛んですが、安倍政権が有識者会合を設置するなど、ここにきてますます拍車がかかっています。こんなときだからこそ、しっかり知っておきたい集団的自衛権の基礎知識です。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【集団的自衛権と普通の自衛権の違いとは?】
2ページ目 【集団的自衛権は作られた権利なのか、国家が当然に持っている権利なのか】
3ページ目 【日米同盟を深めるためには集団的自衛権容認は必要? 不要?】

日米安全保障条約と「集団的自衛権」

日米安保と集団的自衛権
日米安保のもと、日本はアメリカにどこまで協力できるのか?

日米安全保障条約は、日本の「集団的自衛権の行使」を義務づけたものではありません。

日米安全保障条約第5条
「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。(後半略)」(下線部はガイドによる)

日本の領土内で日米両国が自衛行動について協力するわけですから、アメリカにとっては集団的自衛権の行使になっても、日本は自国の自衛、つまり個別的自衛権の行使を行っていることにすぎないからです。

もっとも、「敵」がもっぱら米軍基地や日本領海内の米軍艦隊などを攻撃してきた場合、日本がともに自衛行動をとることは集団的自衛権の行使になるのではないか、という意見もあります。

集団的自衛権行使はしていないが……

ただ、最近の安保体制は日本がアメリカとともに集団的自衛権を行使する「スレスレ」のところまで協力を深めていることは事実です。

それは、1996年の「安保再定義」によって安保の役割を極東だけでなく「アジア・太平洋の安定」にまで広げ、1997年に日米の密接な防衛協力を定めた「新ガイドライン」ができ、そしてそれに基づいて「周辺事態法」などの法整備がなされたことに表れています。

周辺事態法では、いまだに地理的な定義がはっきりしていない(ないという説もある)「周辺事態」に対し、日本がアメリカに対し「物品及び役務の提供、便宜の供与その他の支援措置」(第3条)などを行うことが規定されています。

また、2001年の「9.11」を受けて作られたテロ対策特別措置法ではアフガニスタンの武装勢力への攻撃を行う米軍などへの後方支援を規定、現在自衛隊がそれをインド洋で行っています。

さらに2003年のイラク戦争を受けて作られたイラク復興支援特別措置法では、復興支援だけでなく「国際連合加盟国が行うイラクの国内における安全及び安定を回復する活動を支援」(第3条)を行うことまで規定されました。

集団的自衛権の行使を武力行使そのものだとしたら、日本は集団的自衛権の行使はしないけれども、他国のそれを支援しているところまで、現実にきているといえます。

アメリカとの関係重視か、あくまで憲法か

アメリカの本音
アジアの不安定要素を考えると、日本に「集団的自衛権の行使を認めてほしい」と考えているアメリカ。
経済発展の著しいアジアですが、同時に北朝鮮問題や台湾問題、さらに中央アジアやフィリピン・インドネシアでのイスラム原理主義的テロリズムと、アジアが大きな不安定要素も抱えているのも事実です。

アメリカは、この不安定要素に対する対処として、韓国やフィリピン、そして日本といった「同盟国」「友好国」との協力関係を一層強めたいと思っています。そしてそのためには「日本が集団的自衛権を行使しないのは困るな」と考えているところがあります。

アメリカで2000年に発表され話題となったいわゆる「アーミテージ報告」では、「日本の集団的自衛権禁止は日米同盟を制約する」とはっきり言及しています。政府見解ではありませんが、このあとこれをまとめたアーミテージが国務副長官になったことを考えると、この言い方はまさにアメリカの本音がでているといっていいでしょう。

日本は日米同盟を重視して集団的自衛権の行使容認に踏み切るべきなのか、それとも憲法を重視して一線は守るのか。憲法論議とあわせて、考えていきたいところです。

◎関連インデックス 日本の防衛問題

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▼こちらもご参照下さい。
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