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【1999年に復活したスコットランド議会、独立派政権誕生】
スコットランド人が「イギリス近代」を作った
近代経済学の父アダム・スミス。スコットランドは貧しいながらも多くの有能な人材を輩出していく。 |
「力」で負けたスコットランドの人たちは、「知」でイングランドに対抗しようとします。こうして近代のスコットランドでは啓蒙運動が盛んになり、それによって多くの優秀な人材を輩出することになります。
もっとも有名なのは『国富論(諸国民の富)』を著し、近代経済学を打ち立てたアダム・スミス。産業革命に大きな貢献をしたワット(蒸気機関の改良者)もスコットランド出身。近代イギリス建築様式も、スコットランド建築家クレイグによって確立されました。哲学者として有名なヒュームもスコットランド人です。
そして20世紀、労働党を率いて始めての労働党政権(連立政権)を誕生させたマクドナルドもスコットランド人です。労働党は貧困に悩むスコットランドで躍進し、現在もなおその人気は続いています。
スコットランド・ナショナリズムの復興
スコットランドでの労働党の躍進はスコットランドでの労働運動を盛んにさせ、自治運動へと発展していきます。そして20世紀後半からの北海油田の開発は、原油の権利をめぐり、スコットランド人の主張を強め、やはり自治、そして独立の気運を高めていくことになります。そんななか、20世紀初頭に創設されていたスコットランド国民党=SNPはその運動の広がりをみせるようになり、その流れは、1979年のスコットランド自治をめぐる住民投票実施にまでいきつきます。しかし、労働党政権が可決の条件を有効投票総数ではなく有権者全体の40%以上としたことで、この住民投票で自治案が通過することはありませんでした。
その後、自治に反対する立場の保守党・サッチャー政権が長期化し、スコットランド自治への道はいったん閉ざされます。サッチャー政権は非効率な国営炭坑を次々に閉鎖していきましたが、その多くがスコットランドにあったため、今でもスコットランドであまり保守党は人気がありません。
ブレア政権の誕生とスコットランド自治の開始
99年から3度行われたスコットランド自治議会の選挙結果。SNP=スコットランド国民党。 |
住民投票によって承認されたスコットランド法によると、議会は一院制で、議員の任期は4年と規定されています。また、73議席は小選挙区で、56議席は比例代表でそれぞれ選出されることになっています。
日本と同じように小選挙区と比例代表別々に投票する2票制。比例代表ではスコットランドを8地方に分けて候補者名簿を政党に提出させますが、全体の得票で政党の配分議席を決定したあと、各地方の候補者数を決めていくので、ある地域の小選挙区で圧勝した政党はその地域の比例代表から当選者が出ず、小選挙区での当選が少なかった地域の比例代表候補を優先的に当選させるようなことがあります。
スコットランド自治議会(イギリスでは単に「スコットランド議会」と呼ばれることが多いようです)には外交や国防を除いた広汎な立法権が移譲されており、そういう意味でイギリスは事実上「連邦制」になったという人もいます。
自治議会が制定した法に問題が生じたときは、「枢密院司法委員会」によって裁決が行われます。通常裁判所によって争うこともできますが、不服な場合は枢密院司法委員会に訴えることができるようになっています。
そして、自治議会は首相にあたる筆頭大臣を選任し、自治政権が作られます。1999年以降スコットランドは「準国家」としての地位を獲得したといっていいでしょう。問題は「正式国家」になるかどうか、それとも連合王国にとどまるかどうか、にあります。
第3回選挙で始めてSNP政権が成立
スコットランド自治を実現したのが労働党政権だったこともあり、1999年と2003年の選挙では労働党が勝利、労働党政権が誕生していました。しかし労働党人気が陰りを見せるなか行われた2007年選挙では、SNPが1議席差ながらも労働党を抑えて第1党に躍進。サモンド党首が新首相に選出され、はじめてのSNP政権が誕生しました。
もっとも、SNPは自由民主党などと連立協議を行ったものの不調に終わり(保守党とSNPは仲が悪い)、結局少数政党である緑の党と協定を結ぶにとどまる少数政権になっています。
そのため、これからの政権運営が落ち着くかどうか疑問視する向きもありますが、ともかくも「スコットランド独立」を主張するSNP政権の誕生は、今後のイギリス政治に大きな影響を及ぼすことになるかもしれません。
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