2ページ目 【未成年者とはどういう意味があるのか】
3ページ目 【日本はなぜ20歳が成年年齢になっているのか】
【未成年者とはどういう意味があるのか】
未成年者=法律行為が制限
未成年者の法律行為は原則として親など「法定代理人」の同意を必要とする。 |
世界の多くの国の民法で人を「成年者」と「未成年者」にわけているわけですが、それにはどのような意味があるのでしょう。
それは、法律行為における行為能力を制限するかしないか、ということにあります。
簡単にいうと、たとえば自動車をローンで購入するという契約、こういうことが「法律行為」です。その行為能力が完全にはない、と考え、契約という法律行為について、ある人の同意などが必要だとするのが、「行為能力の制限」という考え方です。
未成年者は、まだ年齢が浅く、物事の分別がついていないので、多くの国で行為能力を制限されています。日本の場合、法律行為には原則「法定代理人(多くの場合は親)」の同意を必要とすることになっています。
民法第5条
「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。」
おこずかいを使うのにもいちいち同意が必要?
さて、民法第5条を読むと必ず質問されるのが、「おこずかいを使ってモノを買っても親が取消をできるのか」ということです。このことについては、第3項にその答えがあります。「おこずかい」は、「法定代理人が処分を許した財産」にあたるのですね。
つまり、たとえばお母さんが子どもに「おこずかい」として1万円渡した段階で、その子どもは1万円を法定代理人であるお母さんの同意なく自由に使うことができ、お母さんはその行為を取り消すことができないのです。
結婚すれば未成年者でも成年とみなされる
未成年者でも結婚した場合は成年に達したものとみなされ、法定代理人の同意は必要なくなります。これを「成年擬制」といいます。民法第753条
「未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。」
これは20歳になるまでに離婚しても効果は続くと考えられています。ただしだからといって、選挙権が与えられたり、喫煙・飲酒ができるようになるわけではありません。
また、例外的に天皇・皇太子・皇太孫の成年は18歳と定められています(皇室典範第22条)。
過半数の国で成年年齢は18歳
海外の多くの国では18歳=成年というのが普通になっている。 |
もっとも韓国・スイスは日本と同じく20歳成年制をとっています。もっとも両国とも前ページで述べた通り有権者年齢はこれより低いのですね。
ほか、ネパールでは16歳、北朝鮮は17歳、ブラジルやシンガポールなどは21歳となっています。
韓国やスイスのように成年年齢と有権者年齢を分けるのもあり、だとは思うのですが、欧米諸国のほとんどは制度の複雑化を避けて、一本化しています。
確かに、選挙権は18歳、成人式は20歳では、成人式を迎えて思う気持ちもなんだかよくわからないというところがあるかもしれません。
国によって違う外国人未成年者の扱い
さて、ネパール人は16歳で成年となるわけですが、その人がたとえば17歳で日本に帰化した場合、成年者になるのでしょうか。明治時代にできた古い法律「法例」では、このように規定されています。
「第3条 人ノ能力ハ其(その)本国法ニ依リテ之ヲ定ム」(カッコ内はガイドによる)
ということは、日本人となったネパール出身の17歳の人の能力は、日本の国法、つまりこの場合は民法によって規定されることになるので、日本人となった瞬間、法律行為が制限され、未成年者として扱われることになります。
もっとも、これは国によって違います。
ドイツ・スペイン・スイスなどの民法では、「いちど成年になった者は永久に成年である」という原則があります。そのため、ネパール出身の17歳の人が18歳~20歳成年制をとるこれらの国に帰化しても、成年として扱われることになります。
次ページでは、なぜ日本の法律が20歳成年制をとっているのか、その理由をさぐっていきます。