今年の通常国会での重要法案となりそうな「国民投票法案」の成立にあわせるかたちで、選挙権取得の年齢と成人年齢を「18歳に引き下げ」ようという気運が高まっています。海外では18歳というのが主流のようですが、なぜ日本は今までずっと20歳だったのでしょうか。
1ページ目 【欧米先進国ではほとんど選挙権=18歳で取得】
2ページ目 【未成年者とはどういう意味があるのか】
3ページ目 【日本はなぜ20歳が成年年齢になっているのか】
【欧米先進国ではほとんど選挙権=18歳で取得】
欧米では「18歳で選挙権」が主流
欧米先進国では有権者年齢は18歳なのが主流。 |
また、韓国は19歳で選挙権取得、となっています。ブラジルは16歳になると選挙権を取得し、19歳から69歳までは投票が国民の義務となっています。
もっとも、日本よりも選挙権の年齢が高い国もあり、シンガポール・マレーシアなどは21歳以上というふうになっています。
しかしながら、欧米先進諸国はのきなみ選挙権が18歳以上となっています。もっとも、18歳以上となったのは主に戦後の話です。古くは21歳以上というのがヨーロッパでは主流でした。
しかし1960年代末から有権者年齢の引下げが始まりました。イギリスが1969年、カナダ1970年、アメリカ1971年(ただし連邦選挙に限る)、ドイツが1972年、フランスが1974年、イタリア1976年……スイスは意外と遅く1991年となっています。
また、EUが設置する欧州議会に対する選挙権も18歳以上のEU市民(EUに加盟している国民)とされています。
日本と様子が異なる欧米諸国の選挙戦
このため、欧米諸国の選挙戦は日本とは少し様相が異なります。選挙権が18歳、ということは高校生もたくさんいるわけで、アメリカの議員や大統領候補などは高校に行って演説することもよくあります。
特にアメリカの大統領選は1年以上にわたるロングラン選挙であるため、候補者たちは名前を売るため、来年選挙権を得る高校2年生にも演説します。高校での選挙活動は、非常に有意義なわけです。
もっとも、日本の場合、たとえ選挙権が18歳に引き下げられたとしても、こういった教育現場に政治を持ち込むことがいいかどうか、議論がわかれそうですが。
学校のほか、若者のサークルなどに顔を出したりすることも大事な選挙運動になります。ライブハウスに顔を出す候補者、なんてのもいるわけです。
昔は国際的にみて低かった日本の有権者年齢
日本は一時、世界のなかでは有権者年齢がむしろ低い国だったことは、意外と知られていないことだ。 |
しかし、最初は高額な税金を払っていることが条件だったので、選挙権を持っている人の数は非常に限られていました。税金の条件がなくなり、いわゆる普通選挙になったのは1925年のことです。
1945年、敗戦とともに日本を占領したGHQ(連合国軍総指令部)の指令によって、日本の選挙権は20歳以上の男女、と定められました。
先ほどもご紹介したように、このころはまだ選挙権を21歳以上とする国が欧米では主流だったので、日本の有権者年齢はこの1945年当時は、世界的にみて実は低い水準だったのです。
ただ、その後欧米諸国が有権者年齢を18歳に引き下げていくなか、日本では引下げが行われず、現在ではむしろ高い水準になってしまいました。
憲法改正しなくても有権者年齢は引き下げられる
このようにサミット参加国のうち唯一日本だけが有権者年齢20歳と高くなっている状況なわけですが、なぜ有権者年齢の引下げをしないできたのでしょう。難しかったのでしょうか。手続が面倒ということはありません。選挙権を憲法で決めている国(アメリカ)などもありますが、日本の場合は多くの国同様、「公職選挙法」という法律で規定されています。
つまり、法律改正でことがすむわけですから、制度上のハードルはそれほど高かったわけではありません。
日本では、日本に限りませんが、有権者年齢=成人年齢という考え方が強いため、有権者年齢引下げによって、成人が「18歳以上」となることに対する、抵抗があったというのが正直なところでしょう。
さて、そもそもその「成人」とはなんなのでしょう。成人と未成年、単にお酒が飲める飲めないの違いなのでしょうか。次ページでみていきます。