(記事掲載/2007.01.07)

今週から毎週日曜日掲載することになった「日曜日の用語解説」。今回は混迷するイラク情勢をみるうえで知っておきたい基礎用語「スンニ派とシ-ア派」です。

スンニ派──全信徒の90%が所属

イスラム教の聖地
イスラム教にはいくつかの聖地があるが、シーア派独自の聖地も存在する。
イスラム教の開祖である預言者ムハンマドが示したとされる例やモデルのことを「スンナ」といい、スンニ派という呼称はこの言葉から生まれています。(「スンナ派」ということもあります)。

キリスト教の3大宗派(カトリック・正教・プロテスタント)や2つの仏教(大乗仏教・上座部仏教)とは違い、このスンニ派には信徒の90%以上が所属しています。

つまり、われわれの考えるイスラム教とは基本的にスンニ派であって、スンニ派は宗派、というよりは「正統派」と考えた方がわかりやすいでしょう。

しかし、イスラム教には72もの宗派があるとされています。そのうち最も普及し、ペルシャ(イラン)の国教となったのがシーア派です。

シーア派──アリー一族を敬う人たち

シーア派とはなにかを語るためには、まずイスラム教の歴史を見ていかなければなりません。

開祖ムハンマドの死後、彼の後継者そしてイスラムの指導者である「カリフ」として、3人が位につきました。しかし、ムハンマドのいとこそして娘婿(むすめむこ)であり、彼の最も有力な後継者とされたアリーは、なかなかカリフにつくことができませんでした。

その後アリーはカリフになりましたが、シリア総督ウマイヤ家との戦いを強いられ、やがて彼らの刺客によってアリーは暗殺されてしまいます。こうしてウマイヤ家はウマイヤ王朝を作り、イスラムの指導者となりました。

しかし、アリーとその末裔こそがほんとうのムハンマドの後継者だ、と考える人々が現れました。彼らが、やがて正統派に対抗するシーア派を形成していったのです。

シ-ア派独自の聖地

イスラム教にはメッカ、メディナ、エルサレムといった聖地がありますが、シ-ア派にはさらに4つの聖地が存在します。

イラク中央部にあるナジャフは、アリーのお墓がある場所です。18世紀くらいからイスラム法学者がここに多く住むようになり、イスラム社会の1つの中心となりました。

その北部にあるカルバラーは、アリーから数えて3代目の「イマーム」(ムハンマドの後継者)フサインが、ウマイヤ朝に対して蜂起するも王朝軍によって殺害された場所として知られています。

イランの首都テヘランの南にあるコムは、第8代イマームであるリダー(ペルシア語でレザー)の妹ファーティマ(ファーテメ)の廟がある場所で、1979年イラン革命勃発の地でもあります。リダーはイラン東部のマシュハドで毒殺されたとされ、イマーム殉教の地となったマシュハドは「貧者の巡礼地」としてしられています。

イスラム法学者の力が強いシーア派

このような歴史的経過から、シーア派はイスラム社会のなかでは辺境の地であるイラン・イラクで発達していったのでした。そしてイランではシ-ア派が国教となったのです。

しかし、シーア派の主流「12イマーム派」においては、最後のイマームは「ガイバ」つまりお隠れしてしまったので、今はこの世にはいません。やがて彼は再臨するといわれていますが、そのあいだシーア派社会を秩序だてるのは、とりあえず王などの支配者とイスラム法学者、ということになります。

イマームの代理人である高い位の法学者がムジュタヒドであり、やがて彼らの権威は高まっていきました。今のイランは政府の上に、最高指導者であり新聞などでは「~師」と表記されるムジュタヒドが君臨しているわけです。

イラクのスンニ派とシーア派

イラクの宗派と部族
イラクではシ-ア派人口が圧倒的だが、フセイン時代はスンニ派が優遇、シ-ア派は迫害されてきた。
さて、フセイン元大統領はイラクを統治するため、世俗主義を掲げながら、少数派であるスンニ派を保護してきました。

特に、1979年にイランが革命のすえシ-ア派原理主義的な国家となってからは、イランに対抗するためイランと戦う一方、イラン寄りのシ-ア派を大きく迫害してきたといわれています。

そのため、シーア派はフセイン元大統領とスンニ派を嫌っているのです。それが、現在の「内乱」ともよばれるイランの深刻な宗派対立につながっています。

さて、イラク第3の勢力・クルド人は基本的にスンニ派です。しかし、イランが一時イラクを撹乱する目的でクルド勢力に援助をしていたことから、フセインはクルド人も激しく弾圧しました。こうしたことから、アラブ人スンニ派とクルド人スンニ派も、仲はよくありません。

宗派対立がいつまで続くのか、和解の道はないのか……今後のイラク情勢をみていくうえで大きなポイントです。

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