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司法権と「裁判官の独立」(2ページ目)

司法権の独立、という言葉はよく耳にされると思います。それでは「裁判官の独立」は? ……大人のための政治教科書シリーズ、今回は裁判官にスポットを当てて解説してみました。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【司法権の独立と「裁判官の独立」】
2ページ目 【裁判官をすぐに辞めさせることはできない】
3ページ目 【裁判官への任命とその任期とは】

【裁判官をすぐに辞めさせることはできない】

裁判官の身分保障

東京地裁
写真は東京地裁。裁判所で働く裁判官の独立を守るには、その身分保障を行うことが重要であることはいうまでもない。
「裁判官の独立」を実質的なものにするには、裁判官の身分保障を行うこと、つまり理由もないのに辞めさせられたり給料を減らされたりすることがないようにしなくてはいけません。

憲法では、裁判官が罷免、つまり辞めさせられる理由は次の3つの場合のみと定め、裁判官の身分保障をしています。

・裁判官が心身の故障を起こし、裁判不能の状態になったとき
・国会の弾劾裁判所で罷免の判決を受けたとき
・最高裁判所の裁判官については、国民審査で有権者の過半数の罷免票が投じられたとき

裁判官が「心身の故障」に陥ったとき

心身の故障を起こして裁判ができない裁判官には、さすがに辞めて頂くしかありません。憲法にもそれによる罷免ができると定められています。

もっとも、「司法権の独立」の観点から、裁判官が「心身の故障」かどうかは裁判所の内部で判断することになっています。

「裁判官分限法」という法律によって、地方・家庭・簡易裁判所の裁判官は管轄する高等裁判所が、高等・最高裁判所の裁判官は最高裁判所が、それぞれ「分限裁判」によって「心身の故障」によって罷免するのが適当かどうかを判断することになっています。

ただし、高等裁判所が審理した場合、不服がある者は最高裁判所に抗告することができるようになっています。

弾劾裁判とは

弾劾裁判の流れ
弾劾裁判の流れ。われわれ国民も、裁判官を訴追するよう求める権利が認められている。
弾劾裁判所は立法府である国会が裁判所を監視する機関として設けられているもので、不正・非行を行った裁判官を国会議員からなる裁判官が裁判して罷免させるかどうかを判断します。

「裁判官弾劾法」では、「職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠つたとき」「その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたとき」ということが裁判官を弾劾する理由として規定されています(第2条)。

弾劾裁判はまず裁判官訴追委員会による訴追によって始まります。起訴のようなものですね。訴追委員会も国会議員によって構成され、衆参各10名の委員がいます。

われわれ一般国民も、裁判官の訴追を訴追委員会に請求することができます。

訴追を受けて裁判が始まります。弾劾裁判官は国会議員、衆参各7名ずつです。訴追委員のほか、裁判には訴追された裁判官の弁護人が出席できます。裁判ですから、証拠調べや弁論なども行われます。

最終的に、裁判官の評議により、3分の2以上の裁判官により罷免が決定します。罷免されると、裁判官だけでなく、検察官や弁護士といった「法曹」としての身分も失うことになります。

もっとも、罷免された裁判官は判決から5年たつと復権(資格回復)を申し出ることができます。これが認められると、法曹としての身分を回復させることができます。

憲法制定以来、7件の弾劾裁判があり、5名が罷免されました。また3名がその後復権しています。

国民審査制度・裁判官への懲戒処分の限界

アメリカの州で始まった制度が裁判官の国民審査制度です。日本国憲法にも導入され、衆議院議員総選挙とともに行われています。

詳しくは、ガイド記事『どうする?「最高裁国民審査」』をご覧下さい。

また、憲法は在任中の給料減額や、行政機関による裁判官への懲戒処分を禁止しています。

もっとも、「裁判官は、職務上の義務に違反し、若しくは職務を怠り、又は品位を辱める行状があつたとき」(裁判所法第49条)について、裁判により懲戒処分を受けることがあります。裁判はさきほど述べた分限裁判として行われます。

★最後のページでは、裁判官の任期、再任、定年などについてお話したいと思います。
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