文章:石原 敬子(All About「よくわかる経済」旧ガイド)
米国オバマ大統領の掲げた「グリーン・ニューディール政策」の柱の1つ、「スマートグリッド」が注目を集めています。米国の後を追うように、最近では日本のビジネス界でも急速に脚光を浴びるように。スマートグリッドとはどのような技術で、どのようなビジネスチャンスを秘めているのでしょうか。
<INDEX>
スマートグリッドとは(1P目)
スマートグリッド導入でできること(1P目)
スマートグリッドに積極的な米国(2P目)
日本と米国の連携(2P目)
国内でもスマートグリッドの技術開発が本格化(2P目)
注目される用途はエコカーとの連携(3P目)
目先のビジネスは、新興国などへの技術供与?(3P目)
スマートグリッドとは
スマートグリッドとは、「スマート(賢い)」な「グリッド(電力網)」のこと |
発電事業者(発電施設)-送電-変電-電力使用者(企業・工場・一般家庭など)で生ずる課題解決を目指す考え方です。通信・IT技術を積極的に活用する点が特徴。電気機器などに関する情報の通信や制御を行い、電力の利用を最適化しようとする構想です。
スマートグリッド導入でできること
電力は、とりわけ需要と供給が重要な商品です。発電所は、常に需要つまり電力使用量に応じて電気を作っています。スマートグリッドの導入で、昼と夜、季節の違いなどによる電力使用量の変動を平準化できれば、効率の良い発電が可能になります。例えば、電力会社からの指令で、電力使用量が増える昼間に自動的にエアコン温度を変える、というようなことが可能になるでしょう。
ただしここで問題視されているのが、プライバシー。各家庭での電力使用状況の詳細な把握が必要になります。電力制御のためとはいえ、個人の生活を監視されたり日常生活がコントロールされる印象を持ち、不快に思う人もいるのではないでしょうか。
太陽光発電や風力発電などからの、バラついた発電量の調整もできるようになります。そのため、新エネルギーの導入促進としても期待が寄せられています。たとえば、太陽光発電では予想外に曇りの日が続いて予定量の発電ができないこともあります。その場合には、原子力や火力などほかの発電施設からの電気を調達しなければなりません。これらを一元管理して運営する技術がスマートグリッドです。
他にも、省エネへの効果は期待できます。すでにグーグルは、家電製品ごとの電力使用量を表示する家庭向けのアプリケーションをベータ版で提供しています。電力使用量がリアルタイムに数値で把握できることから、電力使用量の削減につながるとされています。
以上のようなことから、スマートグリッドは、新エネルギーの普及促進や温室効果ガスの削減に貢献する新技術と考えられています。
次のページでは、スマートグリッドに積極的な米国や、現状における日本の取組みについてまとめました。