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日曜日の用語解説:「省と庁のちがい」

第2・第4日曜日に更新されることになった「政治の時事用語」。政治についての最新の言葉をコンパクトに解説します。今日は「防衛省昇格」問題で気になる「省と庁のちがい」について、お話しします。

執筆者:辻 雅之

第2・第4日曜に更新「政治の時事用語」。今日は「防衛省昇格問題」からふと疑問に思う「省と庁の違い」について、お話します。
 

必ず「国務大臣」が長となるのが「省」

防衛庁
写真は防衛庁。
国家行政組織法では、「各省の長は、それぞれ各省大臣とし、内閣法にいう主任の大臣として、それぞれ行政事務を分担管理する。」と定められています(第5条)。

つまり、省でいちばん偉い人は必ず「国務大臣」でなければならないのです。言い換えれば、庁に国務大臣を置く必要はなく、置く場合は別の法律を作って国務大臣を長官にあてます。

2006年10月現在、「庁」の長が国務大臣と規定されているのは防衛庁だけです。「防衛庁の長は、防衛庁長官とし、国務大臣をもつて充てる。」(防衛庁組織法第3条)という規定があります。
 

「庁」は「府省」の「外局」

「庁」は、府や省の「外局」として置かれているものです。

「省は、内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関として置かれるものとし、委員会及び庁は、省に、その外局として置かれるものとする。」(国家行政組織法第3条3項)「内閣府には、その外局として、委員会及び庁を置くことができる。」(内閣府設置法第49条)※下線はガイドによる

省に外局を置くのは2つの理由によると考えられています。

・業務の量が膨大で、省の内部部局で行うことが不都合なため
・省の本体業務とは異なり特殊で専門的なことがらを扱うため

このような場合、省の内部部局から切り離して、庁(あるいは委員会)を置き、業務関係が複雑にならないようにしているのです。
 

今ある「庁」とは

今、外局としての庁は以下のようなものがあります。

・内閣府:金融庁、防衛庁
・総務省:消防庁
・財務省:国税庁
・文部科学省:文化庁
・厚生労働省:社会保険庁
・農林水産省:林野庁、水産庁
・経済産業省:資源エネルギー庁、特許庁、中小企業庁
・国土交通省:海上保安庁、気象庁

宮内庁は、内閣府に属すると規定されていますが、内閣府の外局とはされていません。また、警察庁・検察庁は警察法・検察庁法で規定された独自の庁で、外局ではありません。

防衛施設庁は、内閣府である防衛庁に属する庁という、異色の庁となっています。政府案通り「防衛省」ができた場合は、防衛施設庁は内部部局に再編されることになっています。
 

防衛庁が省になるとなにが変わるのか?

防衛庁省格
防衛庁が省になると、それまで内閣府を通さなければならなかったことが防衛省単独で行えるようになるとされる。
内閣に属する内閣府の外局から、内閣の直接下に属する省になるわけですから、基本的に地位が向上します。

つまり、今までは予算要求や政策決定などについての提案や要求について、内閣府を通して閣議などにはかっていたことを、これからは「防衛大臣」が単独で閣議にはかることができるようになるのです。

とはいえ、実質的には今まで防衛庁はなかば省として扱われてきた経緯があり、予算要求や政策決定などについて内閣府を通す、というのも形式上のものになっていました。

そのため、省になっても基本的には「格が上がる」だけで、防衛庁の業務があまり変わることはない、といわれています。

自衛隊の地位については、政府案によると、防衛省ができたとしても、その最高指揮権が内閣総理大臣にあることは変わらないことになっています。

ただ、政府案ではあわせて自衛隊法を改正し、国際協力支援に基づく後方支援活動を、自衛隊法上の本体業務として扱うよう変更されることになっている点があります。

大きく変わるのは「談合の舞台」として不評だった防衛施設庁の地位です。政府案によると、2007年度をもって廃止され、「防衛省」本体にとりこまれ再編されることになっています。
 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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