(2006.10.08)

政治の超基本講座、ここからいよいよ「司法」に入っていきます。裁判所のしくみとか、基本的なお話をしたいと思いますが、まずは基本のキ、「司法っていったい何?」

1ページ目 【司法とはどんなはたらきのことをいうのか?】
2ページ目 【司法でも解決できない争いがある?】
3ページ目 【司法を担う裁判所のしくみとは?】

【司法とはどんなはたらきのことをいうのか?】

法の内容を実現させるはたらきが「司法」

司法とは
犯罪やトラブルなどに法を適用し、法の実現をはかるのが「司法」。
日本国憲法では、「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と規定されています。

さて、ここでかなり素朴な疑問が生まれてきます。そもそも「司法」とは、いったい何なのでしょうか。

法律は、それが作られた時点で、人々の行動のルールとなります。例えば、人にケガをさせたら賠償しなくてはならないとか、人を殺してはいけないとか。

また、その法律に基づいて、行政機関が仕事を行うこともあります。難しい言葉で「法の執行」といったりします。

しかし、法律は行動のルールとしてのみ存在するわけではありません。

たとえば、法律に違反して人を殺す人がいます。また、人にケガをさせたのに賠償しない人がいます。……これをそのまま放置しておいては、法律が死んでしまいます。法律を実現させなければなりません。

この「法律(法)の実現」こそが、司法の役割です。法を適用して人を殺した人には刑罰を科し、また人にケガをさせた人には正しく賠償させるのです。こうして司法の働きによって、法律を裁きのルールとして事件などに適用させ、法の内容の実現を目指すのです。

また、人々の間で争いが起きたとき、法律に基づいてその争いを収めることも司法の役割です。法律を適用することによって争いを強制的に止めさせ、不安定になっていた人々の権利関係を安定させるのです。

このように司法は、法律の内容を実現し、そして法律に基づいて争いに決着をつける国家の役割であるということができるでしょう。

「司法」の要素と「裁判」

さて、憲法学者として有名な芦辺信喜氏は司法の要素として次の4つのものをあげています。

1)具体的な争い・事件があること……法を適用してなにかを解決すべき具体的なことがらがあること(犯罪、金銭トラブルなど)

2)適正な特別の手続に従うこと……誰が見ても、また歴史的に見ても公正な手続がなされること

3)独立してなされること……立法者(国会)や行政機関とは独立した機関が司法を行うこと。

4)正しい法の適用を保障するはたらきであること

かならずしも、裁判が司法のすべてというわけではありません。具体的には、裁判所で行われている調停や和解といった、裁判以外の法の適用の手続も司法のはたらきの1つです。

こういった司法のはたらきの中で、裁判はもっとも拘束力の高いものです。裁判の決定・判決は人々の権利・義務を確定するかです。民事裁判では人々の民事上の権利や賠償義務などを確定させたりしますし、刑事裁判では被疑者に刑罰を与えるかどうかを決定します。

そのため公正さを期すため、裁判は原則的に公開で行うこととされています(憲法第82条)。また、日本国民以外の全ての人に裁判を受ける権利が保障され(憲法第32条)、さらに刑事被告人には公平で迅速な裁判を受ける権利を保障しています(憲法第37条1項)。

少年審判はなぜ非公開?

少年審判
少年審判は裁判ではないので非公開。しかし、それについて批判があがりはじめ、少年法は改正された。
もっとも、全ての裁判が公開されるわけではありません。憲法は公序良俗を乱すおそれのある場合、判決以外を非公開にすることを許しています。ただし、政治犯罪・出版に関する犯罪・憲法上の人権が問題となっている事件の裁判では非公開は許されません(憲法第82条2項)。

さて、少年事件を扱う、家庭裁判所での少年審判はなぜ非公開なのでしょうか。

少年審判は裁判ではないからです。刑事罰を決める場ではないからです。刑事罰を与えることが適当と考えられた場合は、家庭裁判所以外の裁判所で行われる刑事裁判で少年事件を裁きます。

これに対して少年審判は少年院送致など、少年についての「保護処分」を決定する場なので、裁判ではないとされているのです。

もっとも、被害者や遺族であっても少年審判の内容がわからないのはおかしいという声が、少年事件の凶悪化とともにあがるようになりました。

そこで改正少年法が2001年に施行され、被害者などへの審判記録の開示などが行われるようになっています。

★さて、次のページでは司法の要素である「具体的事件」の意味について説明していきたいと思います。