2ページ目 【改正案にある公共心、そして「愛国心」とはいったいなんなのか?】
3ページ目 【避けて通れない「日の丸・君が代」についても一問一答で解説します】
【改正案にある公共心、そして「愛国心」とはいったいなんなのか?】
改正案が可決されたら、個性を重視する教育は行われなくなるのですか?
「個の尊重」と「公の意識」これを両立させる教育とはいったい何か? それが大きな問題だが話されることは少ない |
しかし、当然それに沿って教育関係法や学習指導要領などが作成されるわけですから、影響がないとはいえません。
もちろん、改正案でも「個性をつぶす」ようなことは書かれていません。いま以上、公共心を充実させようということです。しかし学校など教育現場においての教育で「個」と「公」のバランスをどう取っていくか、というのが難しいことは否定できないでしょう。
それは、いろんな人の価値観の問題があること、このバランスの問題を理解してうまく授業できる教育者がいったいどれだけいるのか疑問、というところからくる難しさです。
教育基本法には「愛国心」も規定しているのですか?
かなりの議論を経た結果、改正案からストレートな表現はやや弱められ、このような表現になりました。改正案第2条5項(教育の目標)
伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
「我が国と郷土」を愛する、ということで、在日外国人にも一定の配慮を示したといえるでしょう(生まれたのは日本でも、「国」は別にある人たちが多くいるわけですから)。
また、「国際社会」を強調することで、ナショナリズムの行き過ぎに一定の歯止めをかけていると、一応は評価できるでしょう。
そもそも「愛国心」とは?
「愛国心とは何か?」……この問題を正確無比に答えられる人がいたら、その人は超天才なのかもしれない。そのくらい難しい問題だ |
日本が嫌いで出ていきたい、という人はかなり少ないでしょう。しかし、「愛する」ということになると、果たしてどういう気持ちがそれにあたるのか。朝食がトーストの人は愛国心がないのか。違いますよね。日本のプロ野球に背を向けてメジャーに行く人は愛国心が足りないのか。WBCのイチロー選手をみれば違うというのはよくわかるでしょう。
国を愛する、非常に大事なことです。しかし、「これをしないと愛しているとはいえない」ことを強制することはできませんし、そもそも無理な話です。
そのため、「愛国心」教育を行うのであれば、それこそいろんな意見に耳を傾け、それを総合し消化した上でわかりやすく話ができる教育者が必要になります。しかし、実際の現場はそのような環境でないことは事実です。
教育の現場行政は地方公共団体の役割ですが、最近、国旗・国歌に対する態度でそれを「測定」し、教員を処分するようなことも行われています。典型的なのが入学式などの重要行事での国歌斉唱をしているかどうか、ということです。
そもそも式典で起立といわれて起立もしない教師はどうなのか、ということもありますが、例えば極端な話、みんなが寝ている深夜の住宅街で、大声で君が代を歌う人に愛国心はあるのでしょうか?
このような問題がいろいろと発生しているのですが、君が代については日の丸とあわせて、この機会ですから次ページで質問にお答えしていきたいと思っています。
日本人は「愛国心が足りない」から改正なのですか?
これまた難しい問題です。W杯でも五輪でも、このあいだのWBCでも、みんな「がんばれニッポン!」と応援しました。荒川選手の金メダル、WBCの優勝、そんなときに日本を誇りに思った人は多いでしょう。
実際、愛国心が足りなくなってきているというデータは、見つける方が大変です。むかしから変わらない、といっていいでしょう。
むしろ強くなりすぎている弊害がみられます。「2ちゃんねる」などの匿名掲示板などでは、日韓・日中問題でもめているとき、日本のナショナリズムを過剰に表現したいためか、相手の国民に非常に失礼な書き込みがあったりするのをよく見かけます。
個人的には、特に若者の間でナショナリズムは大きく高揚していると思います。たとえば青年層でナショナリズム的な伝統的観点から「女系天皇反対」をいう人は結構増えていると思います。データはないのですが、私に来るご感想(↓下から書き込みできます)を見るに、毎年青年層の女系天皇反対論者は増えていると思います。
その他、教育基本法改正で変わったところは?
いろいろあるのですが、一番大きなことは「義務教育」の年数です。現行では第4条で「9年」と定められていますが、改正案では(5条に移行)年数の規定はありません。おそらく拡大されていくと思われます。特に幼稚園の義務教育化です(だからといって保育園がなくなるわけではなく、保育園でも幼稚園教育が義務化されることになるでしょう。いわゆる「幼保一体化」議論にもつながってきます)。
保育園で5年間育った子どもに比べ、幼稚園にいっていない子どもはなかなか学校という集団にとけ込めず、現場で問題になっている(「学級崩壊」など)ということで、数年のうちに実現するかもしれません。幼稚園が義務教育になっている国はいくつかあるようで、世界的な傾向のようです。
次ページでは、「愛国心」を語るに避けられない「国旗・国歌」のお話をしたいとおもいます。