2ページ目 【女系天皇を認めないために女性天皇を認めないのは憲法違反?】
3ページ目 【日本が敗戦した「1945年8月」に事実上の「革命」が起きた?】
【日本が敗戦した「1945年8月」に事実上の「革命」が起きた?】
女系天皇制は今の日本そのものを変質させてしまいませんか?
つまり、男系天皇制の否定は、日本の伝統を絶やし、日本国家の枠組みを大きく変えてしまうという懸念ですね。確かに、そのような声が、女系天皇制反対の根拠としてあがってきています。今まで連綿として受け継がれていた天皇制とは違う政治制度の国になってしまうのではないかということです。
このような考え方を「国体論」ということがあります。議院内閣制などといった政治体制=「政体」を超えた、日本古来の伝統的な「国体」を維持しなければならないということです。
このような考え方に対し、日本の「国体」は日本国憲法制定の時点ですでに変わっている、という反論があります。その中に「八月革命説」、つまり1945年8月の敗戦により日本の国体は変わったのだ、というものがあります。
「八月革命説」について、もうちょっと教えてください。
第2次大戦の敗戦と、それにともなう憲法の改正により、天皇制は次のように大きく変化したというものです。つまり、それまでの天皇制では、天皇は神の子孫が世襲するということになっていましたが、日本国憲法では「国民の総意」に基づいて天皇の地位が決まり、世襲されているという規定に変わりました(第1条・第2条)。
ここで、日本の建国以来の「国体」は大きく変わり、新しい「象徴天皇制」にとって変わったのだ、という考え方です。つまり、敗戦を境にして、一種の「革命」が起きた、と考えるものです。
その考え方からすると、もはや男系のみを世襲するという規定にとらわれる必要はなく、象徴天皇制を守るために女系天皇制を採用してもよいということは説明できます。
実際、最後の帝国議会における憲法制定過程のなかで、女系天皇を認めるべきだという議論はさかんに行われています。
「八月革命説」は学説の中心なのですか?
かなり支持されていることは確かです。しかし、反論も多数あります。反論として一番言われているものが、いわゆる「押し付け憲法説」です。つまり、アメリカを中心とした連合国によって押し付けられたのが日本国憲法であり、これによる国体の変更うんぬんというのは正当性がない、というものです。
これについての詳細は、ガイド記事「日本国憲法は「押し付け」か?」もご参照ください。
また、反論として、憲法改正による象徴天皇制の導入は憲法構造を超えた連合国への「約束の実行」にすぎず、それで「国体」が変更されたとはいえないというものもあります。
しかし今の世界情勢の中、女系天皇を認めないのは?
このような意見に対し、「一国の重要な伝統を世界情勢などと関連して考えるのはおかしい」という反論がなされています。かつて大相撲の土俵に女性政治家が立ち入れるか否かで論争が起こったこともありましたが、それひとつとっても、「世界の趨勢=男女平等」と、「大切な伝統」の釣り合いを考えるのは難しいことです。
しかし、日本がこれからもいわゆる「皇室外交」を続けていくためには、世界の趨勢に天皇制もならい、世界各国国民の理解を得るよう努力すべきだ、という意見もあります。
実際、2003年、国連において女子差別撤廃条約が審議されていたとき、外国の委員から「日本の天皇制は条約違反」という指摘があったといいます(読売新聞2005年12月23日号、坂東眞理子氏(元内閣府男女共同参画局長、現昭和女子大学副学長)へのインタビュー記事より)。
「天皇制の国際化」を行って海外からの支持も集まる皇室外交を展開するか。それとも海外の人々に日本の伝統として今の男系天皇制を認めてもらうようアピールしていくか。
このような見方も、女系天皇制を考えていく上で重要になってくるかもしれません。
あまりあせらず、時間をかけて議論したいのですが……
愛子さまがもし天皇になることになったとしても、愛子さまのご即位が結婚前であれば、今の愛子さまの年齢を考えれば、(愛子さまは「男系天皇」ですから)女系天皇制の是非を問う時間はまだたくさんあります。また、「皇室典範第17条の改正」という手もあります。
つまり、17条では天皇の代理者となる摂政就任順を、皇太子など男子皇族優先にしています。これを変更し、万が一男系男子皇族がいなくなった場合、女性皇族に摂政になってもらい、その間議論するということもできるということです。
天皇の空位については先例があります。神話時代を除いても、斉明天皇崩御から天智天皇即位までの間、天武天皇崩御から持統天皇即位までの間、それぞれ数年天皇の空位期間があります(いずれも7世紀)。
※「『女系天皇問題』Q&Aによる基礎知識」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。
▼こちらもご参照下さい。
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