最近問題になる「大陸棚」。地理や地学の話でなく、国際法にも「大陸棚」という概念が存在し、「大陸棚は領土の自然的延長」として国際法的に沿岸国の権利があるのです。そんな大陸棚の話と、それが問題になる日中間のお話を。
1ページ目 【「大陸棚」と「排他的経済水域」の違いとは?】
2ページ目 【大陸棚の境界線を決めるとされる「衡平の原則」とは?】
3ページ目 【東シナ海、日本と中国に「衡平な原則」を適用したら?】
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【「大陸棚」と「排他的経済水域」の違いとは?】
経済水域より大陸棚のほうが法的な歴史は古い
領海以外で沿岸国の大きな権利が認められる権利といえばいわゆる「200カイリ水域」、正確には「排他的経済水域(EEZ)」が知られていますね。しかし、もう1つ、同じように大きな権利が認められているものがあります。それが大陸棚です。
実は、大陸棚の権利のほうが、認められた歴史は古いのです。
つまり1945年、アメリカ大統領トルーマンがいきなり「合衆国の沿岸に接続する大陸棚の地下・海床資源を合衆国の管轄権と管理」のもとにおく、と宣言します。
カリフォルニア沖に眠る石油の採掘権を狙って出されたこの宣言はこのように非常に一方的でしたが、思いのほか反発よりもむしろ同調する国が多く、その後、多くの国が「大陸棚の権利」を主張し始めました。
そのため、1958年の第1次海洋法会議で「大陸棚条約」が締結され、「水深200mまで、または開発可能な深さまで」が、沿岸国が権利の設定できる大陸棚と決められました。
経済水域の確定までは結構もめた
一方、排他的経済水域(EEZ)は、もう少し遅く設定されました。1947年、チリの大統領が一方的に沿岸200カイリ水域を「領海」にしました。200カイリの領海はさすがにでかすぎます。領海、ということは漁業とかそこで無断でやると捕まえるぞ、ということですからね。
そういう立場からアメリカは大反対しましたが、ラテンアメリカの太平洋側諸国は次々に同じような宣言をしていきました。
この争いは大陸棚と違い、1970年代までもつれます。そこにきて、ようやく「200カイリ水域は領海ではなく、天然資源への優先権水域」ということにしよう、という話になっていきました。
それが、難航した第3次海洋法会議(1973~82)で認められ、現在「海の憲法」といわれる国連海洋法条約に盛り込まれることになり、各国とも200カイリ水域を設定、現在に至っています。
大陸棚はあくまで「海底とその下」についての考え
さて、排他的経済水域(EEZ)と、大陸棚とは、何が違うのでしょう。1982年に採択され、1994年にようやく発効した国連海洋法条約によって、EEZと大陸棚は、同じ条約で定義されることになりました。
この条約でEEZと大陸棚に対する沿岸国の優先的権利は、基本的にはこのように規定されています。
EEZ:海上・海中・海底・海底の下の資源
大陸棚:海底・海底の下の資源
というわけで、EEZと大陸棚は、重なっているところもあるわけで、「ここはX国の大陸棚であり、かつEEZ」という海域もたくさんあるわけですね。
しかし上のようなEEZと大陸棚の区別は現在でもしっかりされていて、「ここはEEZなので大陸棚ではない」という主張は「間違い」とされています。細かい話ですが。
大陸棚は「自然の延長」として350カイリまで設定可能
しかし、大陸棚はEEZと違い、「200カイリ以上」設定することも、場合によっては可能なのです。基本的に地学的には大陸棚とは200mまでの海底をいいますが、大陸棚条約と違い、国連海洋法条約にはそのような定義はなく、「領土の自然の延長」という表現をしています。
これが200カイリ以内なら問題はないのですが。
問題は「自然の延長」が200カイリを超える場合です。そういう海もたくさんあります。これは海底の地形によって変わってくるのですが、結論から言うと、
・350カイリまで設定
・水深2500mの線から100海里まで加えて設定
のどちらかを沿岸国は選べることになっているのです。
こんなのでいいの? と思う方もいらっしゃるでしょうが、それについては次のページでお話していきましょう。