1ページ目 【戦後日本最高のポピュリスト、その名は「小泉純一郎」?】
2ページ目 【表向きはポピュリズム、そして背景には巧みな「小泉流マキャベリズム」】
3ページ目 【「インテリ主義」に陥った?民主党は日本版ナロードニキだったか】

【「インテリ主義」に陥った?民主党は日本版ナロードニキだったか】

「ナロードニキ」とは

さて、話は19世紀末のロシアに飛びます。

ロシアは近代化が遅れに遅れ、他の近代化したイギリスなどの欧米諸国に大きく遅れをとっていました。ロシア皇帝だったアレキサンドルは中世の遺物であった農奴の解放に踏み切るなど、近代化への改革へ乗り出します。

しかし、これには皇帝専制を守る欺瞞(ぎまん)的な要素が強く、改革は不徹底でした。そのため、「真の改革」を目指すため、多くの知識階級の若者たちが運動を起こします。

彼らは「ヴ・ナロード」=「人民の中へ」を目指し、それまでいた大学などの恵まれた環境の中から、農民たちのいる貧しい農村に入り、民衆レベルでの改革を目指そうとしました。

彼らのことを、「ヴ・ナロード」の標語からとって、「ナロードニキ(人民主義者)」とよびます。

挫折した「ヴ・ナロード」

しかし、彼らの運動は当局による弾圧と、農民たちの冷淡さから、挫折してしまいます。

当局からの弾圧は覚悟の上として、ナロードニキたちが直面し困惑したのは、実に農民たちの冷淡さでした。

政治から閉ざされていた農民たちは、インテリ出身のナロードニキたちが言っている「近代化」「政治への参加」という概念が、理解できませんでした。

むしろ、都会からやってきた富裕層出身である彼らを敵視するものさえ現れたのでした。

こうして、最終的にはナロードニキたちに嫌悪の目を向ける農民たちと、当局が結びつくことで、「ヴ・ナロード」は挫折してしまうのです。

※もっとも、これらの運動がやがてロシア革命に影響していないか、というと、論争もありますが、否定は難しいでしょう。

なぜナロードニキ運動は挫折したか

ナロードニキたちの精神は近代化、民主化への情熱にあふれ、真にロシアを平等で豊かな社会にしようという高い理想に燃えていました。

しかし、彼らは、彼らインテリたちと、農民たちの意識がいかに離れているか、理解しないまま農村に赴きました。運動は性急すぎました。農村の状況を調べてから、現実的な策を練って、農村に赴くべきでした。

農民たちを攻めるのも酷です。彼らはそれまで「農奴」としてその人格を否定され、無教育なまま、中世の農民のまま、生きてきたのです。いきなり「政治参加」といわれても、理解できないわけです。

民主党は「ナロードニキ」だった?

民主党の主張も、日本をよくしよう、その情熱は伝わってきます。しかし、国民には伝わらなかった。どこか、ナロードニキに通じるものがあります。

たとえば、民主党は(その他、日本のインテリたちは)小泉型「ワン・イシュー選挙」を批判しました。郵政より大事なことがある。その主張には、共感できなくはありません。いずれ、「ワン・イシュー選挙」では勝てない時代が来るでしょう。

しかし、今回の選挙で、国民はようやく「政権を信任・不信任」するチャンスを得ることができたのです。今回、多数の国民にとっての関心事は、「次の総理にふさわしいのは誰か」ということだったのです。

今まで日本国民は、派閥政治、中選挙区制、野党の弱小性などによって、真の意味での政権信任・不信任を国民が選択することができませんでした。

国民は今度の選挙で、ようやく政権の選択、政権の信任を直接示すことができるようになったのです。今回の選挙への関心の高まりも、それを反映したものだったのではないか、と思います。

民主党は、これらのことを前提にして、小泉純一郎という政治家が首相であるべきかどうか、これを軸に選挙戦を戦うべきでした。それが国民の関心事だったのですから。

民主党は、確かにいい政策を多く主張しました。その「政策担当能力」は一部のインテリたちには響いたかもしれません。

しかし、その「インテリ主義」は、待望の「首相信任投票」を前にした国民の心をつかむことに敗北したのです。

民主党は組織化を急ぐべき

民主党は、「こんな国民の政治レベルを嘆く」のでしょうか。それこそまさにナロードニキの二の舞です。してはいけない反省です。

日本国民の政治レベルは確実に上がっています。しかし、民主党の「インテリ主義」は、そんな国民の心を捕まえる力に明らかに欠けていた。そういうことだと思います。

今までも民主党は、選挙のときだけ支持率が上がっていた政党でした。選挙が終わると、じわじわと支持率は落ちていく。こういう政党では、政権奪取は難しい、したとしても続かないでしょう。

民主党は(自民党もそうですが)今の「議員後援会連合政党」から、欧州の政党のように、党員が政党統治に参加できる「組織政党」へと脱皮し、常日頃からの大衆の支持を受けるような政党にならなくてはならないでしょう。

マニフェストを毎年、公開の場で作成しよう

政党の組織化、大変なことだと思います。しかし、やりとげなくては、日本の政党政治は前進しません。

もはや「マニフェスト」という言葉も陳腐化しました。国民はバカではありません。民主党のものにしても、「どうせ、党の上層部だけで、さっさと作ったものだろう」そんなふうに思っている人は少なくないでしょう。

しかし、民主党は「うちこそ優秀なマニフェストを作っている」などと、自己満足に酔いしれてはいなかったのでしょうか。

イギリスの労働党は、2年に1回、定期的にマニフェストを改定しています。しかも、かなり透明化されたしくみで、全党的な議論を経て、作成されています。

民主党も(自民党もそうですが)マニフェストを全党員あげて作るシステムを整備し、それを公開することで、国民にわかりやすく、浸透力の高いマニフェストができるのではないでしょうか。

しかもその過程で、党の組織がすすむことになるでしょう。党のすべての組織がマニフェスト作りに参加するわけですから。それに好感を持ち、また自らもマニフェスト作りに参加しようとした人々たちから、新たな心強い党員が増えるかもしれません。

今回の選挙は小泉純一郎という人物のパーソナリティで勝負がつきました。しかし、次の総選挙では(総裁の任期切れのため)おそらく彼はいません。自民党・民主党、政党の組織化が進んだほうが、次の総選挙に勝利するのでしょう。

「圧勝した「小泉流ポピュリズム」」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。

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