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「旧皇族」の成り立ちと現在

女性天皇議論の中で浮かび上がってきた「旧皇族」の問題。旧皇族の皇族復帰で天皇制は維持できる? それとも? まずは、旧皇族という存在の基礎知識と、今現在の旧皇族の様子をご説明してみます。

執筆者:辻 雅之

(2005.07.31)

「女性天皇論議」のなかで、一部でにわかに高まってきた「旧皇族の皇族復帰」論。はたしてその正当性は……それはともかく、旧皇族とはいったい何か、今どれくらいの人がいるのか、お話していきます。

1ページ目 【まずは、皇室・皇族・宮家についての基本的な知識を】
2ページ目 【宮家の急増から戦後の皇族大離脱まで、激動の皇族史】
3ページ目 【「旧皇族」11宮家のその後、そして現在……】

「皇族」の定義と範囲

まずは、「皇族とはいったい何か」というごく基本的な、しかし重要な説明をしておきましょう。

皇族とは、すなわち天皇の家族とその一族のことです。皇族の定義については、皇室典範という法律で定められています。

皇室典範 第5条
第5条 皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王を皇族とする。


しかし、これだけでは定義はわかっても、範囲がわかりませんね。千年以上続いた天皇家、その一族子孫たるやすごい人数です。

というわけで、この第5条でいう「皇族」とは、1947年5月3日(日本国憲法施行と同じ日)に皇族であった者か、その子孫、あるいは結婚した女子、ということになっています。

ところが、同年10月、連合国軍総司令部(GHQ)が昭和天皇の弟である常陸宮、高松宮、三笠宮を除く11宮家の皇族離脱を日本政府に指令。やむなく、宮内府(現在の宮内庁)は11宮家の皇族離脱を告示します。

ここで皇族離脱を余儀なくされたのが、最近言われる、いわゆる「旧皇族」とよばれる人々ですね。この旧皇族の行方については、のちほどお話します。

天皇は皇族ではない

さきほどの皇室典範にあるように、天皇は皇族ではありません。天皇になれるのは男性皇族のみですが、天皇になった以上、天皇は唯一無比の存在、天皇そのものであり、皇族とは別格、「日本国の象徴」としての地位を持ちます。

現在の天皇を他の天皇と区別するときは、「今上(きんじょう)天皇」と表現するのが普通です。平成天皇とはよびませんし、そんな人はまだいません。

たとえば「昭和天皇」の「昭和」は、天皇の崩御(死去すること)をもってつけられる「諡号(しごう)」です(または「追号」)。生存している天皇には、諡号は与えられません。さっきも言ったとおり、天皇は唯一無比の存在だからです。

皇后・太皇太后・皇太后

皇后は、天皇のお妃様ですね。先々代の皇后を太皇太后、先代の皇后を皇太后といいます。

皇后経験者にも、諡号がおくられます。昭和天皇の皇后は、良子さまというお名前でしたが(久邇宮家出身の皇族)、崩御の後、「香淳皇后」という諡号が与えられています。

なお、天皇と、皇后経験者をお呼びするときは、「陛下」という敬称をつけます。それ以外の皇族の場合の敬称は、「殿下」となります。

親王・内親王・親王妃

天皇の直接の皇子にあたる人です。男性が親王、女性が内親王です。

現在は、生まれたら即この身分になりますが、昔はそうでない時期もあって、たとえば『義経』でご記憶かもしれませんが、反乱を起こして源氏に平家討伐の命令を下した以仁王は、平家との折り合いから、天皇の皇子であったにもかかわらず親王になれませんでした。

また、後には「世襲親王」という制度があったりもしました。つまり、のちほど説明しますが、「宮家」の当主が、代々親王を名乗る、というものです。中世から江戸末期まで、この制度は続きました。

親王妃は親王と結婚した人です。当然、女性です(当たり前ですね)。男性と違い、女性は、皇族に「なる」ことができるのですね。もっとも、狙ってそうなれるわけではないでしょうが。親王妃も当然「殿下」という敬称でお呼びします。

王・女王・王妃

親王の皇子が男性なら王、女性なら女王です。ただし、天皇の直系ならば親王・内親王です。王妃は王と結婚した人です。

内廷皇族と内廷外皇族

公式の言葉ではありませんが、天皇のもとにいる皇族を内廷皇族とよぶことがあります。皇后や天皇の皇子(皇女)たちがそれにあたります。皇子(皇女)たちは、出生と同時に宮号(幼少)を授かります。

たとえば、皇太子の皇女愛子内親王は「敬宮」。天皇の長女でご結婚を控える清子内親王は「紀宮」ですね。皇太子殿下も皇太子になる前は「浩宮」でした。

一方、天皇家とは独立し、いわゆる「宮家」を立てている皇族が内廷外皇族です。

秋篠宮殿下も、独立前は「礼宮」という宮号(幼名)で呼ばれていましたが、成年に達し、新たに「秋篠宮」という宮家を作って独立したわけでした。

ただ、皇太子は、皇太子という地位のゆえ、独立しても宮家を持つことはなく、内廷皇族にとどまります。皇太子のことを、「東宮」ということもあります。

現在、宮家は他に常陸宮、三笠宮、秩父宮、桂宮、高円宮と、計5つ存在しています。

誤解のないように書き添えておくと、内廷・内廷外というのはあくまで会計上の区別であり、地位の上下をいうわけではありません。すべての男性皇族は皇室典範の規定に沿って皇位継承権を持っています。

ただし……今、皇位継承権を持っている男性皇族は6人のみ。しかも、いずれもそこそこのお歳で、これから男子が誕生する可能性は低い……「女性天皇問題」の根は、こんなところもあるわけです。

さて、次のページでは、宮家の発祥から、いわゆる「旧皇族」について、説明していきます。
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