2ページ目 【テロリストが使う兵器:爆弾から「NBC」へ?】
3ページ目 【テロは防げないのか、日本でテロは起きないのか】
【テロは防げないのか、日本でテロは起きないのか】
なぜ、「マドリード・テロ」「ロンドン・テロ」は防止できなかったのですか?
「9・11」の衝撃によって、各国、特に西欧はテロ対策、特にアル・カーイダなどによるイスラム原理主義テロ対策に追われています。しかしながら、大きなテロ事件が起こってしまっているのが現状です。
西欧には、日本人が思うよりも多くのアラブ系、またはイスラム系の人々が住んでいます。それはイギリス、スペイン、ドイツ、フランスならば、おそらく10~100万人単位で住んでいて、国籍も取得しているはずです。
もともとイギリスやフランスはアラブ地域やイスラム地域に植民地を抱えていましたから当然そこからの移民は多いですし、ドイツなども中東などから積極的に移民を受け入れてきました。
たとえば、フランスのサッカーの英雄、ジダン選手がアルジェリア移民2世であることは、良く知られている事実ですよね。
そのような彼らをひとりひとりマークすることは、そもそも大きな人権問題ですし、だいたいそれだけの数がいれば不可能に近いものがあるでしょう。
テロをなくするにはやはり「貧困の解消」なのでしょうか?
「テロは貧困が生んでいる」とはよくいわれることです。「弱者の闘い=テロ」と考えると、この考え方は正当なように思えます。たとえば、パレスチナでの自爆テロなどは明らかに「弱者の闘い」としての「テロ」といっていいでしょう。パレスチナ人の地位が向上し、彼らが豊かになり、弾圧されなくなれば、「テロ」は収まっていくかもしれません。
しかし、「ポストモダン・テロ」には、「貧困の解消」も、残念ながら有効ではないでしょう。
「ポストモダン・テロリスト」の願望はかなり不条理なものがあり、とても実現可能なものではありません。また、実現が許されるものでもない場合がほとんどです。
また、たとえばオサマ・ビン・ラディンなどはサウジの富裕層の出身であり、アル・カーイダなどつくらないでいればいまごろオイルマネーでリッチな生活をしていたでしょう。
また、今回のロンドンテロでも、イギリス国籍を持ち、日本よりもいくらか手厚い社会保障を受けている者たちが犯行を起こしました。彼らはもしかしたらイギリスでは「社会的弱者」だったのかもしれませんが、それだけであのようなテロが起こるのであれば、いまごろどこもかしこもテロが頻発しているはずです。
また、「アメリカの一極支配」が終われば、「アル・カーイダ」などによるテロはなくなるのでしょうか? 答えはやはり残念ながら「NO」です。サリン事件やオクラホマシティー事件は、そのような「反米感情」「イスラム原理主義」とは関係なく起こったものです。
とはいえ、もっとも懸念されている「イスラム原理主義テロ」をおさえるには、アメリカの何らかの対応が必要ではあるでしょう。アメリカの政策が、テロリストたちの精神に「罪もない人を殺してもいい理由」を与えていることは、事実でしょうから。
「人を殺さないテロ」もあると聞きますが?
「恐怖と不安」を起こして社会に打撃をあたえれば、それは「テロ」です。その方法として注目されているのが、「NBC」の「もう1つのC」、「サイバー(Cyber)・テロ」です。たとえば、強力なウイルス・プログラムによる企業サーバの破壊。金融ネットワークへのクラッキングと破壊。新幹線管理コンピュータへのクラッキング。……
これで社会がマヒし、経済に打撃を加えることができる……まさに、「テロ」といえるでしょう。
ただ、いわゆる「ポストモダン・テロリスト」たちはこれを主目的に使うことはないかもしれません。「血を見ることが好きな」テロリストたちであれば、彼らはこれによって社会を混乱させ、その間隙をぬって本物の「流血テロ」を行うのではないでしょうか?
日本で「同時多発テロ」は起こるのでしょうか?
もう起こっています。1995年、東京でのオウム真理教による同時多発サリン事件です。死者数は12人ですが、負傷者数は少なくみて5000人と、世界的に見て史上最大級の「化学兵器テロ事件」です。東京の事件は同年1月に読売新聞が、オウム真理教と松本サリン事件の関係を示唆する記事をスクープされ、さらに信者家族の拉致致死事件の捜査が入りそうになり、追い詰められて実行したものだったので、まだあれだけの被害ですんだのです。
あの事件が、松本事件のようにもっと周到に計画されていたら(もっと多くの動員、高い純度のサリン製造の成功など)、どうなっていたのでしょう。
あれからちょうど10年です。日本は、変わったのでしょうか? ホームのゴミ箱が透明になった程度ではないでしょうか? その間に学校に男が侵入して未来ある8名の児童が殺害されました。ハイジャックで機長の命が奪われてもいます。
郵政民営化したら……という政府広報は送られてきています。しかし、「万が一炭疽菌テロに遭遇したらどうするか」などというマニュアルが配られた、という話は聞きません。
「起こるのか?」という疑問は捨てましょう。もうその質問の有効性は、日本では失われているのです。「テロをなくすにはどうすればいいのか」「必要最小限の犠牲で済ますにはどうすればいいのか」
……このようなことを、国民は、年金や税金の問題と同じ程度の身近な問題として、考えるべきだと思います。
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