2ページ目 【テロリストが使う兵器:爆弾から「NBC」へ?】
3ページ目 【テロは防げないのか、日本でテロは起きないのか】
【テロリストが使う兵器:爆弾から「NBC」へ?】
テロリストが使うという「プラスチック爆弾」とは?
ロンドン・テロでも使われたといわれるプラスチック爆弾。これは何もテロリストのための爆弾ではなく、むしろテロ対策のため、世界にかなり普及した一般的なものです。この爆弾、プラスチックというよりは、粘土のような感じのものです。「コンポジット推進薬」(米軍使用の「C4」などが有名)といわれる、比較的簡単に製造できるものを火薬とし、これを粘土ようなワックスで包んだものです。
簡単に製造でき(公共性を考えてここでは詳述しません)、しかもきちんと扱えば暴発することはまずなく(往々にして、「固形燃料」にして暖をとることもするらしい)、曲げたり形状を変えたりすることも簡単なものです。
実は、爆発力は普通の爆弾よりはありません。しかし、普通の爆弾に比べ、「爆発圧」が急速に上昇することから、乗り物や建物などの閉鎖的空間では効果が高いようです。対テロ部隊は、これを使って「瞬間ドア爆破→テロ部隊せん滅」を図るわけです。
しかし、この便利さによって広まったため、往々にして「横流し」され、テロリストたちにわたっている……これは皮肉なことです。
また、「金属探知機」などに引っかからないことも、使われる理由の1つです。ただ、最近はX線などによる探知システムも開発されています。早期の普及が求められるところでしょう。
とはいえ、ラッシュアワーの交通機関でこれをチェックするのは……難しいですね。
テロリストが「核テロ」を行う、という噂も聞いたことが……
「ポストモダン・テロ」による「大量破壊テロ」が増えた昨今、未然の対処が求められているのが「NBC」、つまり「核(Nuclear)・生物兵器(Biological)・化学兵器(Chemical)」といわれています。核テロについては、アル・カーイダなどが核兵器の入手に動いていたという情報があったことなどや、旧ソ連からの「核横流し」があったとかなかったとかで、懸念されています。
また、いわゆる原始的な「広島型原爆」なら、核物質さえ手に入れば、今は誰でも作れる、とも言われています。
しかし、核兵器や核物質などの入手そのものに、リスクとコストが高くつくことから、可能性は「NBC」の中では比較的低い、と考えられています。むしろテロリストたちは、はるかに低リスク・低コストな「B」や「C」の方を選択するでしょう。
化学兵器テロの可能性は?
すでに、オウム真理教が1994年と95年、松本と東京で、サリンという化学兵器を使って行っているわけです。可能性は十分あります。化学兵器となる物質自体は、その気になれば理系の大学院生レベルなら作ることができるものが多く(ここでも、公共性を考えここでは詳述しません)、未然に防ぐことはなかなか困難といえます。
ただ、その生成過程で失敗すればかなりのリスクをともなうこともあるわけで(現にオウム事件でも生成中の人的被害が出ている)、「賢い」テロリストが飛びつくものでは、ないように思います。
ただ、「ポストモダン・テロ」はそういう合理性では測れない尺度で行われるわけですから……予防はもちろん、万が一起こった場合の救急システムなど、しっかり構築する必要があるでしょう。
生物兵器テロは起こるのでしょうか?
一番可能性が高いと思われるのがこれです。ボツリヌス菌、天然痘などといろいろいわれていますが、特に怖いのは炭疽菌テロでしょう。すでに、「9・11」の後、「白い粉」として炭疽菌が送りつけられるという、炭疽菌テロがアメリカで起こっています(少なくとも5人が死亡)。
炭疽菌は人から人への感染力は弱いのですが、「エアロゾル」、つまり霧状にしてばらまいた場合、炭疽菌は無色無臭で、しかもすぐ発症するわけではないので、気付かれることはないでしょう。
また、炭疽菌は硬い胞子壁(芽壁)によって気象条件に関わらず生き続けることができます。
また、先ほど「人から人への感染力は弱い」と書きましたが、たとえば毛髪などに胞子が付着し、それが何かの原因で拡散していくことは十分に考えられることです。
このようなエアロゾル装置が人知れず置かれ、炭疽菌が噴霧され、人体の肺の中に入った場合(肺炭疽)、死亡率は実に「100%」なのです。
炭疽菌をエアロゾルにすることは、比較的容易です。オウム真理教がすでに東京・亀戸で成功しています(1993年)。しかし何も起こらなかったのは、オウムが誤って「ウイルス実験用」の無害化炭疽菌を入手し、培養していたから、と見られています。
万が一炭疽菌テロが起こった場合、経験の皆無な日本の医療機関が発症を見分けられるか、その場合適切な対処をとれるか、これが問題といわれています。
いずれにせよ、爆弾テロ、化学兵器テロと違い、「安価なコスト」「狭いスペース」(微生物なので)で製造できる上に、「被害の拡散」効果が高いところが、警戒すべき点と思われます。
>>生物兵器テロなどについての日本医師会サイト