景気対策法案の内容(2)
失業者対策
不況が深刻化することによって失業率が上がり、2009年2月の失業率は8.1%にまで上昇しました。景気対策法案では失業者対策費に約820億ドル(約8兆円)充てています。その約半分、400億ドルは2009年中の失業保険の給付金額拡大に使われます。
この他に、フードスタンプの費用、職業訓練の実施、障害者対象の職業訓練などが含まれています。
公共事業
日本も1990年代の不況時によく景気対策として公共事業を打ち出してきましたが、アメリカの景気対策法案でも大規模な公共事業案が含まれています。公共事業に向けられるお金は、約800億ドル(約7兆8000億円)です。
これだけの規模なので内容は多岐に渡っていますが、主な内容としては高速道路や橋などの建設事業に275億ドル(約2兆7000億円)、鉄道建設に80億ドル(約7800億円)、国防総省の施設建設・修繕に42億ドル(約4100億円)、米軍人用の住宅整備に8億9000万ドル(約870億円)、などがあります。
景気対策法案では、全体として「350万人の雇用創出を目指す」と謳っています。法案の内容で雇用が創出されるのは、主に公共事業だと思われます。
一体どこまで効果があるのか?
景気対策法案は、アメリカの財政赤字を拡大させるという意見が出ている |
ただ言えることは、景気対策法案の中で「これなら景気の回復間違いなし!」と言えるような決定的な内容はないということです。減税、公共事業、失業者対策、どれを取っても日本が1990年代に、あるいは他の国が不況時にやってきたことであり、それらが決定的な効果を発揮したことはありません。
ハーバード大のエコノミストであるマーチン・フェルドシュタイン教授は、もっと失業や個人消費に対して思い切った対策が必要であると主張しています。また1986年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者であるジェームズ・ブキャナン氏は、景気対策法案によって財政赤字が膨らんでいくことを懸念しています。
日本も1990年代の不況のために、政府は景気対策を次々と打ち出し、それでも景気は回復せずに政府の財政赤字だけが膨らんでいきました。ブキャナン氏などは、アメリカが同様の道を辿って行くのではないかと予想しているのでしょう。
→次ページ。景気対策法案成立の裏では、ロビー活動が活発に行われていました。