文章:石原 敬子(All About「よくわかる経済」旧ガイド)
4月下旬から6月上旬まで、3月期決算の企業が続々と決算発表を行ないます。その名の通り、前年度の業績や財務内容などの数字をはじめ、事業展開の報告を行なうのが決算発表です。ところが、株式投資の判断には、前年度の決算発表よりも、もっと大事な所に注目する必要があります。さて、それは・・・?<INDEX>
「決算発表」とは?(1P目)
「決算短信」は日本独自の情報開示(1P目)
過去より未来(2P目)
株価先読みには「決算短信」(2P目)
「決算発表」とは?
業績をよくチェックしておかないと株価暴落の憂き目にも・・・ |
その目的は、1つは社内で翌年度や中長期の事業展開の参考にするためで、もう1つはメインバンクや株主、取引先などに公表したりするためです。
株式を上場させていない株式会社は、決算を公表する相手は限られています。お金を貸してくれる銀行、出資してくれている株主(通常は、その株式会社のオーナー一族や特別な関係にある一握りの人たちや取引先など)、商売上の取引先、許認可や届出の関係での官公庁などです。
一方、株式を上場させている株式会社は、どこの誰がその株式を買ってくれることになるか分かりませんから、誰にでも分かるような方法で決算を公表しなければいけないということになります。みなさんも、お金を出してその会社の株式を買う以上は、信頼のおける事業内容で、利益をきちんと出している企業が良いと思うことでしょう。それを知るツールが決算書です。
このように、投資家に対して会社の内容をきちんと公表することは証券取引法の「財務諸表規則」と「連結財務諸表規則」で決められています。しかしこれは「有価証券届出書」または「有価証券報告書」といった書式にまとめたものの義務付けなので、作成には時間がかかり、3月期決算の企業の場合、3月に締めた年度の「有価証券報告書」は通常6月下旬から7月ごろに出来上がって一般の投資家の目に触れることになります。
「決算短信」は日本独自の情報開示
株式投資の判断はスピード勝負。これは、株式取引をしたことがある人にとっては、非常に大きな問題だということが分かると思いますが、その企業に関する情報は、速やかに伝えるべきものです。そこで、スピード重視の「決算短信」というものが重要となっているのです。決算短信は、A4サイズの30ページほどの資料で、簡単にいえば1年の事業展開の結果報告レポートです。
例えば、2006年3月期のAll Aboutの決算短信を例に挙げてみます。決算短信の内容は、まず冒頭に社名、代表社名など、次に業績、事業展開の内容(ガイドサイト、スタイルストアなどの展開についてや関係会社との関係)、経営方針、経営成績と財政状態(2006年3月期の結果の分析と2007年3月期の予測、予想できるリスクなど)、資金調達の方法、そして最後に決算書(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)です。
前述の通り、A4サイズの30ページほどの資料ですから、製本をせずに、出来立てホヤホヤが証券取引所に持ち込まれます。そのため、迅速性が最大の特徴で、投資家にとっては一番重要な情報開示ツールとなっているのです。なにしろ、決算をした結果が一番早く入手できる資料ですからね。
なお、この決算短信は、商法でも証券取引法でも義務付けられているものではなく、証券取引所の要請により、証券市場の慣習として行われている日本独自のものですが、決算短信を証券取引所の所定の棚に放り込む場面は、この時期の風物詩としても定着しています。
いよいよ、次のページでは決算短信のどこを押さえれば株価の予測に役立つのかをお伝えします。