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【一般国民は直接大統領候補を選んでいるわけではない?!】
民主・共和両党の候補者決定
予備選レースが終了したあと、7月下旬から8月にかけて、共和・民主両党で全国党大会が開催され、代議員たちの投票によって候補者が決定するわけです。まあでも大抵の場合、候補者が「獲得」した代議員の数は分かっていますから、予備選レース終了をもって大統領候補選びは終わり。
全国党大会は、それをうけて事実上の大統領選決起集会となることが多いわけです。だから、テレビで見るようなお祭り騒ぎになるわけですね。
もっとも、大接戦の場合は、投票権を持つ知事や党幹部の票の流れが注目され、白熱することになります。クリントン元大統領が最初に選ばれたときは、結着は全国大会までもつれ込みました。
ちなみに、両党の全国党大会は4年に一度、この大統領候補決定の時以外は開かれません。特別に党中央本部があるわけでもありません。このあたりが他の国の政党と大きく異なるところです。
非常に重要なテレビ討論
党大会がすめば、いよいよ大統領選のスタートです。民主・共和党の両陣営とも、選出した候補をかかげて、熾烈(しれつ)な争いを展開することになります。近年問題となっているネガティブ・キャンペーン(相手を非難・中傷する選挙戦術)も公然と行われるようになります。そして、2人の候補による公開テレビ討論が大統領選最大のヤマ場となります。
これが始まったのが1960年の選挙、民主党ケネディと共和党ニクソンの対決でした。ここで早くもテレビ討論の威力が発揮されます。
討論結果はニクソン有利と思われましたが、大汗をかきながらうつうつと語るニクソンにくらべ、ケネディの若々しいイメージが視聴者らには新鮮にうつり、大統領選でのケネディ勝利につながったといわれています。
また、2000年のテレビ討論でも、ブッシュの発言に対し、なかば嘲笑めいた仕種を見せたゴア候補が視聴者に不快感を与え、超僅差での大統領選での敗北につながったともいわれています。
今年の大統領選挙でも、1回目の討論後、世論調査による両候補の支持率は劇的に変化しました。仕種のひとつひとつが票を上げたり下げたりするという意味で、両候補とも最も緊張する場面なのではないでしょうか。
大統領選本選、といっても選出するのは・・・
そして、11月の第1月曜日の翌日の火曜日、2004年は11月2日に、大統領選挙の本選(一般投票)が行われます。ここで、来年から任期を勤める次期大統領が決まるわけですね。ただ、大統領選本選、といっても、有権者が選ぶのは正式には「大統領選挙人」です。大統領を直接選ぶのはこの選ばれた大統領選挙人なのですね。
これは、アメリカ合衆国建国の際、過度な民主主義が進行して「衆愚(しゅうぐ)政治」、つまり一部のデマゴーグに大衆が煽られて政治が混乱するような状況に陥らないように、このような間接選挙のかたちをとったわけです。
つまり、アメリカの建国者たちは、大衆をあまり信用していなかったのですね。
しかし、民主主義の発展とともに、間接選挙は建て前となり、有権者は直接大統領候補に投票することとあまり変わらない選挙方法がとられ、直接選挙に近い形になっています。
大統領選挙人の選出方法は各州によって個別に決められることになっているのですが、50州のうち、48州で、「勝者総取り方式」、つまり得票数1位の候補が大統領選挙人すべてを獲得できるようになっています。
メーン州とネブラスカ州は例外的で、選挙人のうち2人を州全体1位の候補に、残りの選挙人を各下院議員選挙区での勝者に割り振るようになっています。しかし、結果的には総取り方式とほとんど変わらない結果になっているようです。
ちなみに大統領選挙人の数は議会の上院・下院の数と同数になっています。上院議員は各州2名、下院議員は人口に比例して州ごとの数が決まります。
州ごとの大統領選挙人の数は最低3名(アラスカ州など)、最高55名(カリフォルニア)で、これらに首都特別区ワシントンD.Cの3名を加え、合計538名が大統領選挙人の数です。
したがって過半数となる270人の大統領選挙人を獲得した大統領に当選することになるわけですね。
形式的な、本当の大統領選挙
そして各候補の選挙人獲得数が決定した段階で、次期大統領は事実上決定します。しかし、形式的にはこれからが本当の大統領選挙です。なんだか面倒くさいですね。どんなふうになっているのでしょうか。次ページで解説していきます。