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EU(欧州連合)の基礎知識(3ページ目)

拡大を続け、同時に政治統合もすすめるEU(欧州連合)。今度、「ヨーロッパ大統領」の職ができることになりました。ヨーロッパははたしてどうなっていくのか? EU基礎知識とあわせてご覧ください。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【「ヨーロッパ大統領」「EU憲法」が誕生!】
2ページ目 【EUの歴史、まずは基礎知識をおさらい】
3ページ目 【新憲法で変わるEUの政治体制、基礎知識】

【新憲法で変わるEUの政治体制、基礎知識】

●こちらも要チェック! 政治についての基本知識と基本用語

最高意思決定機関は加盟国首脳会議

ではさっそく、EU憲法によってうまれた新たなEU政治体制の基本的なところを、憲法制定前と比べながら、解説していきましょう。

EUの最高意思決定機関は、先ほども述べた通り加盟国の首脳会議である欧州理事会です。これはEU憲法制定の前からずっとそうです。ここでは全会一致で物事が決定されます。

そして、欧州理事会は議長、つまりヨーロッパ大統領と、他にEU外相を任命します。ヨーロッパ大統領の任期は2年半で、2期5年まで在任可能です。

実質的な立法権限は、閣僚理事会、つまり加盟国の大臣たちのあつまりによって決まります。司法とか、財務とか、外交とか、教育とか、分野ごとに分かれ、政策を決定します。

この政策決定方式が、新憲法でかわりました。「二重多数決方式」といわれるもので、

・加盟国数の55%の賛成
・賛成国の人口がEU総人口の65%以上


これをクリアしないと、政策決定ができなくなりました。先ほどいった、大国のリーダーシップ確保のための措置です。ただし、これは2009年からの措置です。

権限が強化された欧州議会、事実上の議院内閣制に

この加盟国間会議のもとに、EUには行政・司法・立法を行う機関が存在しています。それが欧州委員会・欧州裁判所・欧州議会です。

欧州委員会は、各国1名で構成され、EUの官僚部門をとりしきり、通商政策などを経済的な問題やEU内政を扱います。内閣のようなものです。欧州委員長がトップです。欧州委員長はサミットにも参加していますね。

ただ最近は欧州委員長の影が薄くなった、ともっぱらの評判です。しかし、世界経済にとって非常に重要な影響を与えるポストなので、がんばってもらわなければなりません。

欧州裁判所は、欧州委員会から提起された訴訟を扱ったり、あるいは加盟国国民から直接訴訟を受理し、審判を下したりします。

ただ、国民は何でも欧州裁判所に訴訟を起こせるわけではなく、あくまで加盟国がEUに権限を与えた分野に関してのみ、訴訟を起こせます。

欧州議会は、EU国民の直接選挙で選ばれた議員によって構成されています。732議席で、任期は5年です。今までは、議会に予算承認権は与えられていたものの、政策に関しては単なる諮問機関にすぎませんでした。

しかし、EU憲法制定によって、欧州議会にも欧州理事会の同意が必要ですが、立法権が与えられることになりました。名実ともに「議会」になったわけですね。

そして、憲法制定によって欧州議会が欧州委員長を選任することになりました。つまり、欧州議会選挙で左派が勝てば左派系の委員長、右派が勝てば右派系の委員長になるようなしくみになり、議院内閣制的なしくみができあがりました。

ちなみに、6月13日に欧州議会選が行われ、中道右派のグループが最大勢力となっています。ドイツ・フランス・イギリス・イタリアの主要4ヵ国では与党がそろって敗北しました。ただ、投票率は44.2%とけっこう低めです。

EUの新しい試みに世界中が注目

いよいよ、憲法を手にし、まさに「超国家」の道を歩み始めたEU。この憲法が実際に加盟各国で批准され、発効するまでにはもちろんいくつかの紆余曲折が予想されます。

ECからEUに移行する条件となったマーストリヒト条約の批准も、実際かなり手間取りました。

しかしともかく、いよいよ「ヨーロッパ連邦」が動き出した、という感じですね。経済的共同体から政治的共同体、そして連邦へ。EUはそんな道を歩んでいくのでしょうか。

そしてさらに、この試みが成功すれば、多くの地域で同じように経済共同体を政治的共同体にしようとする動きが活発になるでしょう。そういった意味で、多くの国、地域がEUの今後に注目しています。



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