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EU(欧州連合)の基礎知識(2ページ目)

拡大を続け、同時に政治統合もすすめるEU(欧州連合)。今度、「ヨーロッパ大統領」の職ができることになりました。ヨーロッパははたしてどうなっていくのか? EU基礎知識とあわせてご覧ください。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【「ヨーロッパ大統領」「EU憲法」が誕生!】
2ページ目 【EUの歴史、まずは基礎知識をおさらい】
3ページ目 【新憲法で変わるEUの政治体制、基礎知識】

●こちらも要チェック! 政治についての基本知識と基本用語
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【EUの歴史、まずは基礎知識をおさらい】

すべてはドイツとフランスの和解から始まった

ヨーロッパの一体化を強め、アメリカなどの(当時の)新興工業国に対抗して、「ヨーロッパの没落」を防ごうじゃないか、という動きは、第2次世界大戦前からも、あったことはあったのですね。

しかし、ネックはヨーロッパ大陸の二大大国、ドイツとフランスの対立関係でした。1870年の普仏戦争、1914~18年の第一次世界大戦、1939~45の第二次世界大戦、いずれもドイツとフランスが激しく戦った戦争でした。

そもそも両国国境には大きな炭田・鉄鉱がひろがり、有数の工業地帯が広がっていた。これを領有するため、両国は国境紛争を常々ひきおこし、大きな戦争に発展させていったわけです。

ちなみに教科書にも出てくる有名な物語『最後の授業』もフランスとドイツが国境を接するアルザスが明日からフランスからドイツになってしまい、フランス語の授業が今日で最後、という話でしたね(30代のヒトならだれもが知ってるお話でしょうか)。

このフランス・ドイツ両国を和解させるため、1950年にフランスの外相シューマンが発表したのが、シューマン・プランでした。つまり、まずは両国の紛争の種になってきた石炭と鉄鋼を共同管理しよう、という提案でした。

これをうけて、1952年にECSC(ヨーロッパ石炭鉄鉱共同体)が作られます。そしてその理念のもと、1958年にはEURATOM(ヨーロッパ原子力共同体)が創設、さらに密な経済統合を行うため仏独両国のほかイタリアやオランダ・ベルギー・ルクセンブルクなども加わりEEC(ヨーロッパ経済共同体)が作られます。

そして1967年、この3組織が合体する形で、今のEUの前身、EC(ヨーロッパ共同体)が誕生したのでした。ECでは各国共通の市場、つまり関税のない単一市場をつくり、EC内での経済を一体化することによって活発化させることが目標とされました。そして共通の農業政策などもとられるようになりました。

イギリスの加盟によりECは全西欧に

イギリスも、ECに入りたかったのですが、邪魔をした人がいました。1958年からフランス大統領になったドゴールでした。

「強いフランス、強いヨーロッパ」をめざしていた彼は、イギリスが冷戦によって外交の軸足をヨーロッパ大陸からアメリカに持っていったことが許せなかったのですね。そこで長年、イギリスはECから締め出されていました。

しかしドゴールが政権を去ると、イギリス加盟の道が開けてきました。1973年、イギリスはアイルランド・デンマークとともに加盟を果たします(拡大EC)。これで、西欧の主要大国がECにすべて加入し、ますます発展することになったわけです。

その後も1981年にはギリシャが、1985年にはスペイン・ポルトガルが加盟し、ECは全西欧に広がっていきました。

そして、ECからEUへ、経済統合から政治統合へ

ECは先ほどもいったように単一のヨーロッパ市場をめざしてがんばっていましたが、それをさらに強固なものにするためには、通貨統合が必要である、という認識が生まれてきました。

EC各国の通貨を一つの通貨にまとめてしまえば、どこにいってもその通貨が使えるわけですから、単一市場、つまり経済の一体化は揺るぎないものになるでしょう。

しかし、通貨の発行は国の政治的な基本的な権利、主権の一つです。通貨の発行によって、国は独自の経済政策をとれるわけです。そう簡単には通貨発行権を手放しません。

これをあえて統一しようとするわけですから、通貨統合を実現するためには、もはや経済だけでなく、高度な政治的なレベルでの統合が必要である、ということになってきたわけです。

そこで1992年、マーストリヒト条約が採択され、通貨統合に向けた政治的な統合、そして政治統合をさらにすすめるため外交や安全保障政策の共通化などが決まったのです。

そして、マーストリヒト条約発効とともに、1993年、ECは政治的統合を強めた組織であるEU(ヨーロッパ連合)へと発展することになったわけです。

EU発足後の1995年にも、スウェーデン・フィンランド・オーストリアが加盟し、規模はさらに拡大していきました。そして1999年には単一通貨「ユーロ」が誕生し(イギリスなど一部の国はまだ参加していませんが)、難事業であった通貨統合がようやく実現したわけです。

そして、EUは全欧州へむけて発展

そんなEUに、冷戦が終わって経済の自由化をすすめる東欧各国も参加したいと思うようになりました。東欧各国のほとんどの国、はてはトルコまでが加盟を希望するようになりました。

そこで2004年からEUは一気に拡大することになりました。バルト三国、ポーランド、チェコ、スロバキア、スロベニア、マルタ、キプロスが加わりました。EUは一気に全欧州をカバーする勢いで拡大をしたのですね。

今後の課題は、こうした東欧の、経済力が比較的劣る国々と、西欧先進国との格差をどう埋めていくか、そしてさまざまな歴史を持つ加盟諸国のあいだで、どこまで外交や安全保障政策などの共通化がすすめていけるか、という点にあると思われます。

次ページでは、そんなEUの、政治体制についての基礎知識を解説することにしましょう。

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