2ページ目 【主権という考えは近代になって生まれた】
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【国家主権がおよぶ範囲とは】
陸地だけではない、国家主権が及ぶ範囲って
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国家の3要素、それは国民がいること、領域があること、そして主権があることとされています。主権とは国民への最高の権力である、ということはお話しました。ここでは、主権が及ぶ領域とはいったい何か、これをお話しましょう。
領域とは、領土・領海・領空などからなっています。領土とは、その国の領域の中心そのものですね。陸地だけでなく、川や湖ももちろん領土です。
領海とは、領域の沿岸で主権が及ぶ海域のことです。これは、国際法の歴史的にはずいぶんもめました。18世紀には、沿岸から3カイリ(1カイリ=約1.8km)といわれていました。これは当時の大砲の弾丸が沿岸から届いた距離だといわれています。
しかし、20世紀に入ると、もっと広い領海をのぞむ動きが出始めたため、何回も領海の幅を世界的に統一しようとしましたが、なかなかうまくいきませんでした。1980年代になって、国連海洋法条約という条約で明示されたこともあって、ようやく沿岸から12カイリまでが領海、という決まりが、定着するようになりました。
ただし、「12カイリまでは領海にしてもいいよ」というわけで、無理に12カイリまでを領海にする必要はありません。わが日本も、原則12カイリまでを領海にしながら、津軽海峡や大隈海峡などは特別に3カイリまでしか領海としていません。
また、領海は領土と違って、どの国も船も「無害通航権」という権利をもっています。沿岸国を脅かさない船の領海通過は、自由なのですね(漁業活動は、無害とはいえないことになっています)。
領土と領海の上空が領空です。20世紀はじめまでは、上空は自由であるといわれていましたが、さすがに飛行機時代になって、そうもいってられなくなりました。1919年、はじめて領空に主権が及ぶことが認められ、さらに宇宙時代になって、飛行機が利用できる大気圏までが領空として定着したのですね。
さて、領海とは別に、主権が完全に及ぶわけではないが、沿岸国が管轄できる海域が、20世紀になって設定されるようになりました。それが排他的経済水域(EEZ)、俗にいう「200カイリ水域」です。領土沿岸から200カイリ以内の水域は、沿岸国がその水域にある資源について開発などの優先権を持てるようになったのですね。
ちなみに島国日本の200カイリ水域の広さは約390万平方キロ。領土の11倍です。
200カイリ水域以外の海が公海です。公海はどんな国も主権を主張することができません。また、公海はいかなる国にも開放されています。この原則のことを「公海自由の原則」といいます。