2ページ目 【主権という考えは近代になって生まれた】
3ページ目 【国家主権がおよぶ範囲とは】
【主権は最高の政治権力】
他の社会と違い、強制力をともなう権力を発動する、それが国家
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尖閣諸島に中国人活動家が上陸したとき、日本では「日本の主権を守れ」と主張されましたね。一方、イラクに主権は6月に返還されるという。教科書には、日本国憲法には、国民主権主義が採用されているといいます。主権って、いったいなんなのでしょう。
その前に、権力について、考えてみなければなりません。主権というのは、先に言っちゃうと、最高の権力のことだから。
政治とは、いろいろな社会で行われている利害の調整です。運動会の応援合戦でB組は何をするか、ハードなものにするのか、簡単だけどうけるものにするのか、こういうのも利害の調整であり、政治なのです。
つまり、いたるところで政治は行われているわけで、それをとらえた古代ギリシアの哲学者アリストテレスという人は、「人間は政治的動物である」といっています。人間社会にとって、政治は必要不可欠だという意味ですね。
で、たとえばさっきの話で、話し合いで応援合戦のやり方が決まったとき、クラスのメンバーはみんな強制的にそのやり方をやらなければならないわけです。また、多数決でやり方を決めた場合、そのやり方に不服な人にも従ってもらわなければならないでしょう。そのときはたらく強制力、これが権力なのですね。
この権力というものも、そこかしこで、それこそみなさんの職場などでも上司によってよくも悪くも(?)発揮されているわけですが、そんなさまざまな権力のうち最高のものが国家権力なわけです。国家というのは、その国家の領域「すべての」人びとや団体に権力つまり強制力を発動できる唯一の存在なわけです。
政治学では、国家も社会の一員にすぎないという考え(多元論的国家観)が主張されることもあり、その考えはそれで有効な場合もあるのですが、やはり国家はその領域内の社会全体に権力を発動できる唯一の存在であるということは、重要だと思われます。
で、この国家権力は、国内の最高権力であり、具体的には統治権なわけで、人びとは究極的にはかならず従わなくてはならない。と同時に、よその国家の権力に干渉されることも許されない。
このように、最高性と独立性を兼ね備えている国家権力のことを、われわれは主権、とよんでいるわけです。
この主権という考えは、近代になってはじめてうまれたものです。次ページでは、そのあたりをお話してみましょう。