文章:石原 敬子(All About「よくわかる経済」旧ガイド)
「頭では分かっているけれど、ついつい違うことをしてしまう」ということはありませんか?
投資判断や何かを買うという経済行動でも、よくあることでしょう。何かの場面において、合理的な判断ができないのが人間であり、それを追及するのが「行動経済学」です。

<INDEX>
しまった!
しまった!どうして株価が下がらないうちに、売っておかなかったのだろう!?

「行動経済学」が注目されたはじめたきっかけ(1P目)
合理的でない人間の行動とは?(1P目)
計算どおりに人間は動かないことを知っておく(1P目)
あなたなら、どちらを選ぶ?(2P目)
行動経済学をどう活かすか?(2P目)

「行動経済学」が注目されたはじめたきっかけ

米国プリンストン大学のダニエル・カーネマン教授と故エイモス・トヴァスキーが行った心理学の研究が、2002年にノーベル経済学賞を受賞したことがきっかけとなり、「行動経済学」に対する関心が高まりました。
これまでの経済学は、人間の経済行動は合理的な判断に基づくものとされていたため、例えばバブル景気のような経済現象は説明ができなかったのです。

それに対し行動経済学では、人間の判断は全て感情に基づくものであるから、行動はその感情に左右されてしまい、必ずしも合理的な行動をとるわけではない、という考え方です。従来の経済学のように、儲かるからこうする、とか、この方法が得をする、と計算して有利な方法を選択するのではなく、人間は感情で行動するという考えを取り入れています。さらに、合理的でない行動を取るのはランダムではなく、法則があるといっているのです。

合理的でない人間の行動とは?

具体的に、合理的でない人間の行動というのはどういう行動を指すのでしょうか?
巨人戦チケット
5,900円が定価の巨人戦チケット、なぜ2万円でも買う?


東京ドームでの巨人戦のチケット、S席の定価は5,900円です。それを知っていながら、金券ショップではそれが1枚1万円や2万円でも流通しています。熱心なプロ野球ファンや巨人ファンが、その値段でも欲しいといえる価値をつけているのです。これは、合理的な考えでは「高価すぎて買わない」と判断しますが、実際、それでもナマの野球を観たい、応援しているチームの試合が観たい、面白いカードを観たいという人間の心理が、定価の2倍、3倍であっても購入するという行動を起こさせるのです。

デフレなのに高価なブランド品が売れるのも、同じようなことです。
そのブランドなら「安心だから」という購入理由が多いことは良く知られています。品質の良さ、商品選びに失敗がなさそうだとか、価値が広く認められていることなどによる安心感が、価値を高めているのです。
ここには、原材料費などの本来のコストだけでは計ることのできない価値の設定が隠れています。

このようなことが、合理的な行動ではない人間の行動として経済学では説明できないという問題であり、行動経済学では自然な説明ができるという分野なのです。

計算どおりに人間は動かないことを知っておく

株式投資をする際に、簡単に株式市場での株価の動きを説明すると次のとおりになるでしょう。

1.その企業の業績や財務内容が良いから、今後その企業は成長するだろうと多くの投資家が考える。
2.その企業が成長すると株価が上がり、投資家が利益を得たいためにその株式を買う。
3.多くの投資家が、その株式を買うと値段がつりあがる。

ところが、企業業績や財務内容が良くても、その通りに株価が上昇しないことがあります。
株式市場でよく言われる、「良すぎて買えない」の状態です。なぜ?といわれても説明ができないのです。

そのような場合、行動経済学的な考え方があるのだと知っているのといないのとでは、柔軟に投資判断ができるか否かの差が出てきます。この場合の株価が上がらない理由は「企業業績よりも、投資家の心理が株価に与える影響が大きいから」に尽きます。その投資家の心理とは、「良い会社かもしれないけれど、面白味がない」といったあいまいなものなのですが、それでも株価が上がらない立派な理由となるわけです。

行動経済学がどんなものかが大体分かったところで、次のページで自分の心理をチェック!